noteを通じて担当者は進化できたのか?2年間書き続けてわかった運用に必要なスキルや得られた能力について個人の視点から振り返る
白岳しろnoteもついに運用開始から2周年。
これまでの道のりやデータを振り返る記事を書こうかなとも考えましたが、今回改めて発信してみたくなったのが担当者の視点です。
2021年のスタートから2年間書いてきた法人note。その過酷さも相まって、書き続ける意味について一人悩んだこともありました。
しかしその一方で、この活動を通じてしか味わえなかった経験や成長の機会を得られたことに心から感謝している自分もいたんです。
だからこそ、この記事ではnoteに取り組むことで担当者個人にどんな能力が還元されたのかを具体的に書いていきます。
毎週執筆という険しい山を登り続けた結果、自分が担当する広報の仕事にも明らかにいい影響が現れており、このリアルな変化を伝えることが次に挑戦する誰かの道標になるかもしれないと感じたんですね。
その上で、元々抱いていたnote業務のイメージと実際に求められるスキルの違いについても少しずつ理解が進んできました。
今回はそんな法人noteの構造を紐解きながら、担当者が成長する要因やそのプロセスについてお届けしていきます。
note運用ってどんな仕事?
「文章が得意なんですね」
これは、自分がnote担当だと伝えた時によく返ってくるフレーズです。私も担当する前はマラソンのようにひたすら書き続けるのが法人noteで、その運用には文章力がなによりも重要だと思っていました。
実際のところ、多くの会社で書くのが得意な人や広報社員が担当に選ばれているのではないでしょうか。
しかし、いざ始めてみるとnoteは単に書き続ける仕事ではなく、異なる能力を同時に発揮することが求められるトライアスロンのような業務だということが徐々にわかってきます。
ちなみに、活動を通じて運用に必要と考えるようになった4つのスキルがこちらです。
noteを上手に活用している法人アカウントを観察してみると、上記の要素が見事に噛み合っている場合が多いんですよね。
それでは、さっそく一つひとつのスキルを眺めていきます。
①企画力
まずは企画やコンセプトを作り込む力です。
例え上手な文章が書けても、企画が面白くなければ決して読者を楽しませることは出来ません。テーマを発想し、要素を繋ぎ合わせて一つの物語を紡ぎ上げる構想力こそ面白い記事のスタート地点。
よく「ネタ探し」と表現されますが、自社のユニークなポイントを発見して読者に刺さる記事へと磨き上げていく力になります。
②対人力
そして、企画を実行するための巻き込む力もコアスキルの一つ。
インタビュー、コラボレーション、記事の執筆依頼。一つの記事を作るために社内外の人に協力してもらう場面も発生します。そんな時、実現したいビジョンを提示して周囲を動かしていく力も重要になるんですね。
どんなにいい企画も実現されなければ絵に書いた餅。目の前の人と対峙しながらアイデアを形にする大切なプロセスです。
③表現力
お待たせしました。ここでようやく書く力(表現力)の出番です。
いい企画を考え、周りを動かして生み出した種を最終的に花開かせるのが表現の力。noteは文章だけにとどまらず、サムネイルから写真まで記事全体を彩る必要があるんです。
感動を呼び起こしながらも読みやすい記事を生み出すため、論理と感性をフル回転させるのがこのパートになります。
④仕組み化力
最後はもっとも見落とされがちな、継続する力(仕組み力)です。
①~③の記事作成サイクルをいかに設計して、どうモニタリングしながら回し続けるのか。個人の力量や根性に頼るのでなく、記事作りの仕組みをいかに構築するかがメディア化に向けたカギとなります。
自社noteを成長させていくために最も重要なのは継続だと考えているので、こうした能力も社内に担保したいポイントです。
こうしたフレームワークを会社全体で認識しながらnoteに取り組むことで、具体的には下記のようなメリットがあると思っています。
こんな風に法人noteに求められる能力を分解すると、漠然と「文章が上手な人」を担当に選ぶことがいかに危険かわかりますよね。
ただ、こうした法人noteに求められる能力を踏まえた上で、実際にどのような観点で運営体制を構築していけばいいのでしょうか。次章ではその方法について考えていきます。
どのように運用していくのか
先述した4つの行程を一人の担当者が全て行うのは難易度が高いため、必然的に社内外のリソースを活用していくことになります。
その上で、会社の状況によってチーム型かプロジェクト型のいずれかを選択することが現実的な手法となってくるんです。
①チーム型
チーム型というのは、担当者がリーダーとなって全社でnoteづくりの行程を分業していくスタイルです。
例えば、編集部が全体のコンセプトづくりや継続の仕組みを担当しながら、社員全員で記事を発信しているカミナシさんなどはこうしたチーム型の体制を上手に活用されている事例だと思います。
チーム型のメリットは担当者の負担を分散しながらも、多彩な視点から様々なタイプの記事を発信できること。
また固定的なチームを組んでいくことで、運用の属人化を防ぎながらノウハウや仕組みを社内に蓄積できたり、発信を重ねるたびに全社的なスキルが向上していくのも嬉しいポイントなんですよね。
ただし、こうしたチーム型の運営には
といった前提条件が必要で、どの会社もこのスタイルを採用出来るわけではなく、外注した場合はさらにコストもかかります。
そんなnoteに割けるリソースが多いとはいえない企業の担当者におすすめしたいのが、次に紹介するプロジェクト型です。
②プロジェクト型
プロジェクト型とはチームを結成するのではなく、基本的に担当者が自身の得意領域に注力しながら、記事ごとに不足しているリソースを結集するスタイルです。
もちろん当社もこちらのプロジェクト型を採用しており、具体的にはこんな体制でnoteに取り組んでいます。
以前の記事で当社は「ひとり広報」だと紹介しましたが、noteに関しては内容によって流動的に上記メンバーの協力を得ています。
そして、このプロジェクト型を推進する上で大切なのが、担当者の強みと弱みを踏まえた「活かす、任せる、学ぶ」という3つのアプローチです。
具体的に当社はこの3つをこのように割り振りました。
昔から苦手意識のなかった企画づくりや仕組み化は私が担当し、取引先とのリレーション作りやクリエイティブ作成などの不得手な分野は外部へ依頼。そして、肝心の文章は一から学ぶことにしたんです。
このプロジェクト型の良いところは担当者の適正によって、その形を自由自在に変えられる所にあると思っています。
文章が得意な人は企画出しや仕組み化を任せたり、周囲を動かすことが得意な人は書くことを外注するなど、広報に限らずどんな部署からでもnote担当を選出できるのがこのスタイル最大の利点なんですよね。
ちなみに、こちらがチーム型とプロジェクト型の違いをまとめた表です。
こうした特性を踏まえると、どちらのスタイルを選択したとしても下記のような要件を備えた人材が法人note運用には必要になることがわかります。
大事なのは書くスキルではなく、自分に足りない部分を結集する力や未知の領域を学ぶ姿勢というのが2年運営してきた私の印象です。
ただ、こうした能力を持ち合わせた人材は引き合いも多いので、どこまでnoteに力を入れるかを全社的に検討しながら上記の特性を備えた人材をアサインすることも必要になってくるかもしれません。
さて、ここまでは運用の中身やその担当に求められる要件について書いてまいりました。最後は書き続けた担当がnoteを通じて成長できる要素についてご紹介していきます。
noteで感じた「5つの成長」
さあ、いよいよ今回の本題である担当者個人の成長について。
私は2年間noteを担当して5つの能力が飛躍的に伸びたと感じています。ここからはその内容について簡単に説明していきましょう。
①プロジェクトマネジメント力
noteを担当したことで、メンバー調整や締切を担保しながら記事を発信する工程管理などマネジメント能力が圧倒的に向上しました。
特に取材相手への交渉や日程調整など、早めのアプローチや駄目だった場合のリスク管理は他の仕事でもかなり応用が効いています。
広報は一人で取り組む仕事も多いので、社内外と連携しながら一つの成果を出し続けるプロジェクト型の仕事経験を積むのに法人note運用は効果的なんじゃないかと思いました。
②仕事が早くなった
noteの執筆をするようになって、メール・プレスリリース・企画書などあらゆる仕事のスピードが格段にアップしたことも見逃せないポイントです。
その理由は様々ですが、特に大きかったのはこんな要素です。
仕事における「書く時間」って意外と多いんですよね。
書く前悩まずに文章の雛形や構成案を一瞬にして頭から引き出せるようになったことは、個人的に一生物のスキルだと思っています。
③ネットワークが広がった
改めて数えると、noteを通じて知り合った人の数は300名を超えました。
一度取材した方々と別記事でイベント展開するなど、そのネットワークもnote記事へと還元されながら更に大きくなり続けています。
またnoteで知り合った方々と別の案件で仕事をする機会も増えてきており、自分の仕事の幅も大きく広がったと感じているんです。
こうした変化は他者の物語を取り上げるnoteだからこそ生まれた縁だと思っているので、これまで出会った人達とのつながりを活かしながら今後の記事も作っていくつもりです。
④自社や業界の知識が増えた
私は米焼酎や業界の専門知識がほとんど無い状態で中途入社しました。
その上で、歴史や酒造りについて自分で調べながら書いているうちに自然と周辺知識や専門用語がインプットされていったんですね。
こうして蓄えられた知識は様々な原稿の確認や他媒体に寄稿する時などにもとても役立っていて、表現の幅が増えた一方で社内への確認作業は減って、かなりスムーズに作業が進むようになりました。
特にITや製造業など、現場と広報部門の知識量に隔たりがある場合はnoteを書くことでその差も埋められるのでかなりオススメです。
⑤仕事のポートフォリオが出来た
能力とは少し違うかもしれませんが、仕事のポートフォリオが出来たことは自身のキャリアにとって大きな変化だと感じています。
この2年間私が取り組んできたことはnoteを見てもらえば即座に理解してもらえます。通常ポートフォリオと言えばクリエイティブな職業の専売特許でしたが、広報にもその機会をくれるのがnoteなんですよね。
これはX(Twitter)などとは違って、ストック型のSNS特有のメリットですのでこれからもいい記事を書き足していくつもりです。
なぜこの記事を書いたのか
今回、2周年にこの記事を書いたのにはこんな理由があります。
法人noteを運用するというのは本当に大変な仕事だからこそ、常に同じ志を持った仲間が欲しいと思いながら続けてきました。
ただ、実際に取り組むと運用の意外なポイントや落とし穴も多かったので、自分が考えたフレームワークで少しでもnoteを始める人や長く続けられる人が生まれたら嬉しいと考えたのが一つ目の理由です。
そして、もう一つは今もnoteを書き続ける仲間たちへのメッセージです。
本来であれば全国の法人note担当を集結して白岳しろを飲みながら運用の楽しさや難しさを語り合いたいのですが、さすがにそれは難しいので「noteは文章書くだけの仕事じゃないよね!?」と一方的に呼びかけてみました。
この記事のメインターゲットであるnote担当者の皆様が読んで「わかる!」と膝を打ってくれたらこれ以上の喜びはありません。
最後になりますが、この2年間で自分自身大きな成長を遂げられたこと、様々な人と出会えたこと、そしてなにより「表現の場」を与えてもらったことは仕事人としての財産だと思っています。
ただnoteはあくまでツール。この機会を一生懸命活かすことでさらに成長していけるはずなので、これからも頑張って書き続けます。
3年目も白岳しろnoteの応援をよろしくお願いいたします!