見出し画像

120年を超える歴史の中で、白岳が貫いてきた「文化創造型」の酒づくり。それは商品や市場の先にある飲み手の笑顔に少しだけ先回りする未来づくり

本日は、来たる11月2日

世間的には何の変哲もない日付かもしれませんが、本格米焼酎を造る当社にとっては大切な記念日に囲まれた一日です。

まず一つ目の記念日が、昨日11月1日「本格焼酎・泡盛の日」

1987年に日本酒造組合中央会が制定した本格焼酎と泡盛を広くアピールするための記念日で、今年は日本経済新聞朝刊 別刷第二部の特集に漫画家 ウオズミアミさん描き下ろしのイラスト広告を掲載させていただきました。

そして、もう1つの大切な記念日が明日11月3日の「文化の日」です。

文化の日は焼酎造りとは直接関係はありませんが、「酒は文化」というスローガンを掲げ、お酒が歩んできた歴史とその文化のありかたを深く結びつけて考える当社にとってはとても大事な1日。

今回はそんな文化の日を前に、当社がお酒を造る上で大事にする「文化創造型」の酒づくりというテーマを掘り下げていきます。

「文化」を起点とした酒づくり

熊本日日新聞の連載をまとめた冊子「酒は文化」

さて、はじめに当社が120年以上取り組んできた「文化創造型」の酒づくりというコンセプトについて簡単に説明していきましょう。

まず、一般的にメーカーが製品開発をする時には、下記いずれかのアプローチを取ることが多いとされています。

自社の強みを活かした製品主体のプロダクトアウト、消費者ニーズに合わせた市場主体のマーケットイン。自らの中にあるものと外にあるもの。そのどちらかを起点として、製品を作っていく代表的なアプローチです。

もちろん、当社も新製品を開発する時は自社の強み市場の分析をしっかりと重ねます。

しかし、それ以上に大切なのが「そのお酒でどんな文化を創りたいのか」という造り手の意志。これが「文化創造型」酒づくりの起点となります。

単に何本売れるかというだけでなく、そのお酒によって飲む人たちの行動様式や在り方がどう変わるのか。かっこよく言えば、そのお酒で人々の暮らしは豊かになるかという未来像を突き詰めてお酒を造っていきます。

そんな当社が進めてきた「文化創造型」の酒づくりですが、いくつかの特徴がありますので、一つ一つ見ていくことにしましょう。

特徴①成果が出るまで時間がかかる

1つ目は、ゴールまでの時間軸が長いこと。

ある行動様式が、ひとつの文化に成長するまで。つまり、飲む人が美味しいと思って日々の生活における「あたりまえ」になるまでには、5年、10年、もしくはそれ以上の時間がかかることもあります。

だからこそ、造り手に求められるのが長期的な視点。仮に短期的な成果が出なくても、商品やその先に生まれる豊かな酒文化の萌芽を信じて、根気強く支援し続けられるかが文化を創る上では大事なファクターとなります。

特徴②文化の持つ不可逆性

「熱しにくく、冷めにくい」というのも、文化のもつ特徴の一つ。

ある文化が形成されるまでには多大な労力と時間がかかりますが、いったん社会に定着すれば、その行動様式が大きく変わることはありません。別の文化に取って代わることはあっても、元には戻りにくいんですね。

これが一過性の大きいブームとの一番の違いであり、白岳が地元・熊本で長年愛されてきた理由の一つです。創るのは大変でも、その見返りも大きい。こうした点も、文化がもたらしてくれる大きな恩恵だと思います。

特徴③コミュニケーションが変わる

会社全体で文化の創造を目指すと、社内コミュニケーションも自ずと変化します。

それは文化を創るという行動そのものが、企業理念やミッションの実現と非常に親しいからです。ちなみに上の写真は音楽フェスにキッチンカーで出展した際の写真。2日間で3000杯以上の販売記録を達成しました。

しかし、会議でこの報告したときの反応は

「おお!若い人がKAORU買ってる!」

「なんか、今まで飲んでくれてない人たちが飲んでて嬉しい!」

という数字と関係のない反応がほとんど。

売上よりも自分たちが創りたいと思っている光景が少しでも近づけたことにみんなで感動する。こんな風に、目指す未来にむけて社内の共通言語が変わっていくことも企業が文化創造を追う意義ではないでしょうか。

ご覧いただいたように、長い時間はかかるけれど、長く愛される。そんな在り方が「文化創造型」の酒づくりの本質です。

次の章では、実際に白岳が創ってきた文化の形をみていきます。

白岳が創ってきた文化、創りたい文化

当社を代表する商品といえば、白岳シリーズ

白岳、白岳しろ、白岳KAORUという3世代に渡って造ってきた銘柄ですが、実は各銘柄には開発の背景や想いがあります。

ここからは各世代の造り手がどんな文化を創ろうと考え、自分たちのお酒を造ってきたのかを見ていきましょう。

白岳/人吉球磨の地酒から、全国で飲まれる「純米焼酎」へ

まず紹介するのは、白岳シリーズの元祖・白岳現会長が造った本格米焼酎で、飲みやすさと風味のバランスが特長です。

そんな会長が創りたかった文化は「日本全国で米焼酎が飲まれるようになる」というものでした。当時の球磨焼酎は独特のクセがある商品がほとんどで、地元以外で飲む人はあまりいなかったんですね。

ここに一石を投じて、九州はもちろん東京をはじめとする日本全国で飲まれるきっかけとなった起爆剤が白岳です。その様子は以前noteに書きましたので、ぜひご覧ください。

この白岳によって米焼酎は日本全国に大きく広がり、純米焼酎という新たなジャンルと文化が生まれました。この後に誕生する白岳しろは、この白岳の拡大を踏まえた次なる文化を創造していくことになります。

白岳しろ/米焼酎が飲まれるシーンを変えた革命の1本

白岳によって、全国に広がった本格米焼酎。そんな順風満帆な状況を横目に見ながら、白岳しろの造り手である現代表・高橋 光宏は次なる目標を見据えていました。

それが「米焼酎がBARやホテルのような場所でも当たり前に楽しまれる」という新たな焼酎文化の創造です。

当時はウイスキーやジンなど、蒸留酒が大ブームの時代です。

洋酒はオシャレにホテルやBARで氷と一緒に飲むお酒で、焼酎は家や居酒屋でお湯割りかストレートで飲むお酒。

そんなムードに風穴を開けたのが、氷と合わせても相性のいいすっきりとした呑み口とそれまでの焼酎には無かった洗練されたボトルデザインを備えた白岳しろの登場でした。

この白岳しろは新しい焼酎シーンと飲用文化を創造し、過去最高の売上高を牽引する存在、ひいては当社のメインブランドへと登りつめたのです。

白岳KAORU/世代を超えた一杯を目指して

白岳は飲まれるエリア、白岳しろは飲まれるシーンを変革することで、本格米焼酎の新しい文化を創造してきました。

そして今、飲まれる世代を変革して新しい文化を創ろうとしているのが「白岳KAORU」です。全国に広がって様々な地域やシーンで飲まれるようになっても、米焼酎を飲む若い世代はまだ決して多いとはいえません。

そんな焼酎に馴染みのない若年層や女性に対して、ハイボールやレモンサワーと相性のいい白岳KAORUを提供していくことで、新しい世代が焼酎を当たり前のように楽しむ文化を創ろうとしています。

白岳KAORUは、まだ文化を創る道半ばにいます。今後も新しい飲み方やPRを展開して、若い方々の最初のカンパイが白岳KAORUになる新たな文化を形づくっていくつもりです。

なぜ、文化にこだわるのか

さて、最後になりましたが、なぜ当社は文化創造型の酒づくりに120年以上邁進してきたのでしょうか。目先の売上や課題解決という意味でいうと、少し遠回りで非効率なアプローチにも見えてしまいます。

今のところ、この問いに対する正確な答えはありません。

しかし、私個人としては「白岳が500年以上の歴史を持つ球磨焼酎に根ざしてきたこと」が大きいのではないかと考えています。

当社をはじめとする球磨焼酎の蔵元は、球磨焼酎文化を500年以上背負ってきました。

その歴史の中で、目先の商売だけではなく文化を創るということがいかに大切で長期的な恩恵を与えてくれるのかを先祖代々体感してきたのではないでしょうか。

また、500年という歴史を生きてきた中で、長い時間軸で物事を見つめる姿勢が身についたことも長期的な視点で文化の醸成を見守る素地につながったのではないかと思います。

そういう意味で文化創造型の酒造りの根底にあるのは、「次世代に繋ぐ」という覚悟なのかもしれませんね。

1980年頃の従業員さん

今回は少しテーマが堅苦しくなりましたが「お酒と文化」について書いてきました。ただ、言葉は小難しくても取り組み自体は至ってシンプル。

「少し未来にある飲む人の笑顔を思い浮かべ、ちょっと先回りしてその未来を創る」ということにほかなりません。

今後も商品を造ったその先にどんな人達がいるのかを思い浮かべながら、今までと変わらないお酒造りを続けていきたいと思いますので、応援よろしくお願いします!

それでは、よい文化の日を。