いつの時代も、壮大な物語は誰かの夢から始まります。

東京・下落合の川沿いに佇む遊歩道、通称「コーラ小道」。

爽やかな風が木立を吹き抜け、柔らかな空気があたりを包むその一画に、世界初のクラフトコーラ専門メーカー・専門店「伊良コーラ（いよしコーラ）」はあります。

「コカ・ペプシ・イヨシ」

世界的なビックネームが双璧をなすこの業界において、あえて日本の看板を背負ったクラフトコーラで勝負をしたい。

そんな途方もない野望を追いかけながら、目の前の一歩を着実に積み重ねてきた挑戦者が“コーラ小林”こと小林  隆英さんです。

昔から片頭痛に悩まされてきた、小林さん。

“片頭痛にはコーラが効く”という情報をきっかけにコーラの世界へとのめり込み、100年前のコーラレシピを取り上げた海外のサイトを覗いていた時にふとこんな考えが浮かんだといいます。

「これなら自分でも作れるかもしれない」

開発から約2年半。自宅のキッチンで幾度となく試行錯誤を繰り返し、ようやく完成したコーラの試作品を友人に飲んでもらうと「美味しい、ぜひ販売してほしい」という絶賛の一言。

この瞬間、小林さんの運命が大きく動き始めました。

会社員時代の貯金をはたいて購入したフードトラックで移動販売をスタート。初めて参加したイベントでその小窓から見えた風景は、自らが手掛けたクラフトコーラへの大行列と口々に飛び交う称賛の声でした。

それまで情熱だけを原動力にコーラを作り続けてきた小林さん、その想いが確信へと変わったのはこの時だったと振り返ります。

そんな伊良コーラには、創業から大切にするルーツがあります。

それが、昭和29年に和漢方工房「伊良葯工 (いよしやっこう)」を開業した小林さんの祖父・伊東  良太郎さんの存在です。

コーラの実とスパイスを調合して作るクラフトコーラに祖父が遺した和漢方のエッセンスを取り入れることで、伊良コーラ独自の味わいや祖父との邂逅という物語をこの場所から表現しようとしてきました。

また、日本のコーラという在り方も大事なこだわりの一つ。

日本の繊細なものづくりの精神や神秘性を内包した世界でも類を見ないコーラブランドへの道を追い求めるため、いま日本全国の薬草や野草など新たなフレーバーの探索にも乗り出しています。

インディペンデントな文化としての伊良コーラを世界に発信したい。そうした想いこそ、自分たちのアイデンティティだと話してくれました。

そして、創業から5年目を迎えた2023年4月。伊良コーラは世界市場への挑戦に向けて大きな舵を切ります。

小林さんの夢を詰め込んだ新商品「伊良コーラ缶」のリリースです。

起業家 堀江 貴文さんのアドバイスもあり、世界進出の切り札として実現したクラフトコーラ缶。

「自分がコーラに感じたワクワクを、世界中の人たちに味わってほしい」という創業当時から変わらない理念を実現するために、情熱・歓喜・辛苦といった小林さんの全てがこの一本に込められています。

これまでリスクを厭わずに挑み続けてきたその原動力について聞くと、小林さんは笑って答えます。

「僕たちは誰かの豊かな時間に寄り添えるコーラを作りたいですし、なにより挑戦には必ず学びがあるんです。そうした出会いによって、伊良コーラというブランドはもっと深みを増していけると思うんですよね」

挑戦と隣り合わせで生きる、飾らない起業家の横顔がそこにはありました。

自社工房でのスパイス調合、コーラの実をはじめとする原料へのこだわり、そして祖父から受け継いだクラフトマンシップ。

美味しいコーラを届けたいという作り手の想いだけを起点に全てを紡いできた伊良コーラの壮大な物語は、まだ始まったばかり。

現在も様々な業界とのタイアップや海外イベントにも積極的に参加しながら、小林さんはクラフトコーラの可能性を模索する日々を送っています。

こんなクラフトコーラがあったら、世界はもっと素晴らしくなる。

一人の作り手があの日描いた夢は、いま世界初という冠を掲げた日本発ブランド「伊良コーラ」として新たな地平に飛び出そうとしています。

缶のタブを引き上げるとそこから現れるのは、多彩なスパイスの芳醇な香りとこれから繰り広げられるコーラ伝説の序章。

その物語の結末は、ぜひあなた自身で味わい尽くしてください。

Creator

and SHIRO