ライター経験ゼロの広報担当者が約3年で100名以上を取材して学んだ、いいインタビューの構造とその心得を自分なりにまとめてみた
唐突ですが、私はインタビューの仕事をこよなく愛しています。
語り手の熱量や思考がもたらす高揚感と会話を通じてお互いが共鳴していくような一体感がたまらなく好きで、これまでに100名を超える方々の想いに耳を傾けてきました。
そんな今でこそ数多くのインタビュー記事を展開している当社noteですが、初めから全てが順風満帆だった訳ではありません。
当時の私にはライター経験も無かったので、インタビュー中に何度も失敗を重ねながら取材のイロハを学ぶしかなかったんですよね。
ただ、こうした体当たり取材を続けてきた結果、素人同然だった私の中にも徐々にインタビューのコツや心構えが蓄積してきました。
そして約3年の間に体得したノウハウで誰かの役に立てればと思い、このたび自分なりの「インタビューのすゝめ」を書いてみることにしたのです。
ということで、今回のテーマは「未経験から始めるインタビュー」。
ライター経験が無かった担当者が現場で身に付けていったポイントを一気に公開しながら、自社noteにインタビューを取り入れるメリットやその楽しさをお伝えしていきます。
「面白いインタビュー」とは?
「面白いインタビューって、一体何が違うんだろう」
率直にそんな疑問を抱いた私は、まず他社noteやプロのインタビュー記事を徹底的に読み比べるところからスタートしました。
※ちなみに文春オンラインの記事はどれもクオリティが高くてオススメです
そうして読み進めている内に、自分が面白いと感じたインタビューを読むといつも同じ感想が頭に浮かんでいることに気付きます。
それを端的に表現したのが、こんな2つのフレーズです。
「へえー!」という驚きと「そうそう」という納得感。
自分の中に生まれたこの対照的な感情にこそ、インタビューで読み手を魅了するためのカギがあるに違いない。そう思った私はタイプの異なる感想から面白い記事の条件を考えてみました。
条件①個人的な物語で溢れている
インタビュー記事を読むというのは、誰かの人生を読むことでもあります。
だからこそ当たり障りない内容ではなく、取材相手にしか語れないエピソードや独特の考え方といった個人的な物語が記事に溢れているほど、読み手はその人の魅力に惹きつけられていくんですよね。
先述の「へぇー!」という驚きや感動につながるのがこの部分で、面白い記事ほど様々な視点から取材相手に切り込んでいる印象を受けました。
条件②誰しもが共感できる
そんな取材相手の個人的な物語に圧倒されながらも、最後は「うんうん」と共感してしまうのも面白いインタビュー記事の特長。
話の表面的なインパクトだけを追いかけるのではなく、その人の根底に流れる価値観や想いを同時に表現していくことで、個性的でありながらも深みのある記事が完成するのだと初めて知りました。
取材相手の圧倒的なエネルギーとそこから導かれる普遍的な学び。この2つのバランスこそ、いいインタビューの一歩目なんですね。
そうはいっても、この相反する要素をインタビュー記事で表現していくのは並大抵ではありません。
取材される人も自分の想いを全て言葉にできるわけではないので、聞き手の技量で本質的な部分まで辿り着く必要があるからです。
取材相手の魅力を軸に記事を組み立てながら、その根底に流れる人間らしい魅力や葛藤を大きなテーマとして掘り下げていくことが「面白いインタビュー」の真髄。
ここからはそんな理想のインタビューを実践するために実践してきた方法論を、実際の手順に沿って見ていきましょう。
取材依頼から始めよう
意外と見落としがちですが、インタビューは取材依頼から始まります。
特に当社は面識のない方にもコンタクトしていたので、下記文面をカスタマイズしながら電話・メール・SNSのDMを駆使して依頼をしていました。
文面を作る上でのポイントは相手に「安心感」を持ってもらうことで、具体的にはこんな要素を盛り込んでいきたいところです。
口頭よりも後から確認できる書面の方が相手も判断しやすいですし、過去の活動や自分への依頼理由が一目で理解できるとよりインタビューを受けていただきやすくなります。
加えて、事前に文面を作っておくと下記のような利点もあるんですよ。
ちなみに当社はこのスタイルで断られたことは一度もありません。あくまで取材依頼は一回きりの勝負なので、快くOKを出していただくためにも依頼文面は常にブラッシュアップするようにしています。
事前準備が全てを決める
さあ、取材依頼が上手く行ったら次はインタビューの事前準備です。
プロのライターでも事前準備をする派・しない派で分かれるらしいですが、当社はこれまで徹底的に取材相手を調べた上で現場に臨んでいました。
ここまで事前準備を大事にするのは、インタビューの限られた時間の中で絶対に相手の核心にまで辿り着きたいから。
具体的には下記のような流れに沿いながら、大きく分類して「事実→因果関係→本質」という順番で事前準備を進めていました。
まず、一番上の「事実」は過去の実績や数値データで、基本的にはインターネットや他インタビューから情報を取得します。
事前に調べられる情報をインタビューで聞くのは時間がもったいないので、多くの資料を読み比べながら「いつ、誰が、どこで、何をしたのか」を頭から取り出せるようにインプットしていくパートです。
ここで大事なのは、出来るだけ網羅的に把握すること。取材相手の人生を過去からトレースして、くまなく情報を集めていきます。
事実を十分に把握できたら、次は二段目の「因果関係」に移ります。
ここでは行動と行動をつなぐ原因について仮説を立てることがポイントで、「〇〇という決断をしたのは△△が理由ではないか?」など自分なりの道順を事前に作って全体のストーリーを組み立てるのが重要です。
深い仮説に基づいた質問が出来れば取材相手の回答もクリアになって、インタビューの流れも断然スムーズになるんですよね。
また「自分だったら…」と想定して取材に臨むことで、実際にヒアリングした時も自分とのギャップがより明確になります。
そして最後に行き着くのが、一番下に位置する「本質」の部分。
因果関係について仮説を立てる中で、その人の選択軸が浮かび上がってきます。その偏りは“その人らしさ”を構成する部分でもあるので、踏み込んで質問ができる状態にしておくのが理想です。
事実の把握・因果関係の仮説から導かれた取材相手の人物像やこだわりも加味して、インタビューの設計図やゴールイメージを組み立てることが最も大切なポイントになります。
また、事前準備を徹底することで下記のようなメリットも。
取材ではどんな展開になったとしても相手の核心に迫れるよう、事前に調べてられる部分はできる限り準備していきたいものです。
インタビューの種類と役割
いよいよ本番のインタビューへと進んでいきますが、ここでは細かな質問方法ではなく前半・中盤・後半で変化する役割について説明していきます。
インタビュー前半:「入力モード」
まずインタビュー前半はインプットを最優先に考えて、事前準備で仕入れた情報と仮説が正しいかをヒアリングしていくパートです。
相手と自分の会話量が9:1くらいの比率になるよう意識しながら、時系列に沿って決断の背景や相手の想いを網羅的に探っていきます。
話題が過去から現在へと進むたびに相手の行動理由や好き嫌いが鮮明になってくるので、私が取材をするときには決断の背景にある「なぜ(Why)」に当たる部分を集中的にメモするようにしました。
前半のポイントは話したくてもじっと我慢すること。相手のテンポで話せるように聞き役に徹しながら、「面白いですね」や「なるほど!」といった相槌を打ってインタビューの流れを作っていくことが大事です。
インタビュー中盤:「探索モード」
話も深まって全体像が見えてきたら、途中から探索モードに切り替えて気になった話や面白そうなテーマを掘り下げていきましょう。
ヒアリング前半に読者が惹きつけられそうな部分をチェックをしておいて、相手と自分の会話比率を7:3くらいに切り替えていきながら、インタビューでしか聞けない深い部分に辿り着くための質問を重ねていきます。
ここで注意が必要なのは、自分が事前に想定したストーリーに無理やり相手を誘導しないようにすること。
結論ありきの質問をするのではなく、取材相手がインタビューで語る言葉を素直に受け取って、その人の魅力が伝わるような記事のアウトラインをイメージしながら粘り強くヒアリングしていきます。
聞き手の興味関心やヒアリングによってインタビューの方向性が決まる大事な局面でもあるので、事前準備で構築した仮説を駆使して一気に本質へと迫っていきたいところです。
インタビュー終盤:「未来モード」
前半でこれまでの経歴や活動についてインプットして中盤でその本質を掘り下げたら、終盤は今後の展望や抱負を聞いていきます。
これまで過去にまつわる「なぜ(Why?)」を問い続けたインタビューが、「ということは(So What)」という未来モードに切り替わる瞬間です。
前半と中盤で濃密なヒアリングができていれば、取材相手が語る未来の夢や展望もよりリアルで納得感のあるものになります。
今まで通り生きていきたいのか、それともこれまでの自分を変えたいのか。
ここは事前準備ではなかなか知ることが出来ない領域なので、ぜひインタビューを通じて未来への道筋を一緒に歩いてみてください。
以上、私が普段意識している大まかなインタビューの流れです。
質問の仕方は各々のやり方があると思いますが、インタビューを前半・中盤・後半と区切ることによって効果的な時間の使い方をするというのがこの章のメッセージになります。
インタビューを書き起こすポイント
ここまできたら、インタビュー記事もあと一息!
最後は取材内容を記事として書き起こす時に、私自身が意識してきた4つのポイントについて簡単に紹介していきます。
①取材メモを整理する
取材した際のメモや録音を改めてノートにまとめることで、記事を書く前に情報の整理や記事の構成ができたり、事前に調べたことと相手が話したことのつながりが可視化できたりするのでオススメです。
ちなみに上の写真が実際のノートですが、私は方眼紙が書きやすいのでオキナのプロジェクトペーパーを使うようにしています。
一度とったメモを改めて書き直すのは面倒に見えますが、この工程を挟むことで全体の流れが把握しやすくなって、スムーズに記事が書けますのでぜひ一度お試しください。
②会話の「リズム感」を意識する
インタビュー記事は基本的に会話の内容を書き起こしていくので、話している時のリズム感にも注意していきたいところ。
そのため当社では、こんなルールを徹底していました。
ちなみに下は社員インタビューの記事の抜粋ですが、最大3行で必ず改行を入れて会話の間(息継ぎ)を演出しながら、語尾を柔軟に変えることで文章にテンポを生み出すことを意識しています。
プロの記事で最も参考になるのがこのリズム感の部分で、今でもどのように「会話らしさ」を出すのかを研究しながら読むようにしています。
③写真と文章はセットで考える
文章術とは少し違うかもしれませんが、写真と記事の組み合わせ方を工夫するだけで記事の臨場感や説得力が確実にアップします。
例えば、下の写真は社員インタビューで好評だったバックショットです。
さらに高みを目指していこうとする本人の強い意志を階段を一段ずつ登っていく写真とセットにして表現してみました。
インタビュー写真は椅子に座って話しているカットが多くなりがちですが、普段の仕事をしている姿やプライベートの写真が加わるだけで取材相手の人となりがよりストレートに伝わります。
だからこそ取材依頼の際に写真撮影の時間を抑えてもらうのがオススメで、当社の場合は専任のカメラマンと一緒に色々な場所を見学しながら「最高の一枚」が撮れるように毎回ベストを尽くしています。
④何度も声に出して推敲する
最後はテクニックではなく心構えに近い部分ですが、インタビュー記事を作る際は何度も声に出して推敲するようにしています。
それはインタビューの場合、文章のクオリティがそのまま話し手の印象を決定づける怖さがあるからです。仮に自分の文章が冗長だった場合、取材相手のコミュニケーション能力まで疑われてしまうんですよね。
また、事実の誤認や不適切な表現なども絶対にあってはいけません。
だからこそ言葉の使い方や会話の流れに問題がないかを普段以上に読み込んだ上で、会話のリズムやテンポの部分については黙読ではなく実際に声に出して違和感が無いかを確かめるようにしてきました。
取材相手が魅力的に映るかは書き手にかかっているので、一点の曇りもない状態で記事をリリースするという意識が何よりも大切だと思っています。
取材の先に見えてきたもの
さて今回はインタビュー記事について書いてきましたが、いかがしたか?
改めて振り返ると、約3年間で100名以上の方を取材したことでインタビュー記事の割合も全体の60%以上へと拡大し、今や白岳しろnoteのレパートリーを支える大きな柱へと成長してくれています。
こうした様々な人たちの想いが詰まったコンテンツは、米焼酎に興味がない人に記事を届ける上でも大きな武器になっているんです。
また、インタビューを通じて当社のお客様やお取引先様に改めて白岳の魅力を語っていただいたことも見逃せない変化です。
白岳のパックで椅子を作った水本さん
白岳を40年近く届け続けてきた元島さん
これまで自社メディアでは難しかった多角的な視点からの発信が可能になったのも、noteでインタビュー記事にチャレンジしたからこそ得られた成果だったように思います。
そして何より、新しい人達との出会いが純粋に楽しかったんですよね。
インタビューする自分自身が楽しみながら様々な業界の人たちと真剣に向き合ってきたことが、結果として当社noteをパワーアップさせてくれたのではないかというのが個人的な感想です。
これからも白岳しろnoteでは色々な人たちへのインタビューを通じて、自分たちの想いを発信していきますので何卒よろしくお願いいたします!