「いい米、いい水、いい人で」。白岳の本格米焼酎に込められた造り手のこだわりを探すべく、人吉球磨の蒸留所を訪ねた/and SHIRO#3
日本が誇る上質の魅力を再発見するWEBマガジン「and SHIRO」。
第3回は白岳しろを造る人吉球磨の蒸留所に足を踏み入れ、そこに息づく職人たちの姿や上質の本格米焼酎が生みだされる瞬間に触れていきます。
「いい米、いい水、いい人で」
120年以上本格米焼酎を造り続けてきた蔵元として、大切にしてきたこだわりがあります。それが「いい米、いい水、いい人で」という造りの哲学。
いい素材をつかって、いい人が仕込んでいく
本格米焼酎は米と水というシンプルな原料で造られるからこそ、全ての素材に強いこだわりをもち、熟練した造り手たちの技術と情熱をもって極限までその味わいを高めようとしてきました。
日本の米でつくる、本格米焼酎
まず、一つ目のこだわりが「いい米」。
白岳の本格米焼酎につかわれる米には全て国産米を使用し、お酒によってお米の選び方にもこだわり抜いています。
白岳しろには、日本酒の原料にもなる酒米を使用。
その酒米を贅沢に削って精白することで、すっきりとしたなかに米の旨味が広がる白岳しろならではの風味と飲みやすさを実現しているのです。
人吉球磨の伝統文化である球磨焼酎を名乗るための条件の一つに、「米のみを原料に造る」というものがあります。
米だけで造る焼酎造りは、原料に対して一切の妥協が許されない世界。
職人たちがその品質に日々目を光らせ、最高と思しき酒米を選び続けてきた中で、白岳の味は代々引き継がれてきました。
球磨川の恵みを抱いて
そして、二つ目のこだわりが「いい水」。
白岳しろの仕込み水には、球磨川の支流である万江(まえ)川の伏流水をふんだんにつかっています。
「多く(万)の源流(江)がある」というのがその名の由来となった万江川は、綺麗な水域にしか生息しないと言われている山女(ヤマメ)の宝庫で、夏には川遊びや魚釣りを楽しむ姿も多く見られる清流です。
白岳しろをはじめとする本格米焼酎のすっきりとした口当たりも、この清流・万江川の清らかな水があってこそ。
また、人吉球磨地方の地下水でもろみを仕込むというのが球磨焼酎を名乗るための二つ目の定義であり、球磨焼酎が地域ブランドとして世界から認められている要因の一つともなっています。
球磨川があるからこそ、自分たちは酒を造れている
焼酎を造る職人たちは、みな澄み切って味わい深い水を運んでくれる球磨川の恵みに感謝しながら、日々目の前の酒造りと向き合っていくのです。
すべては、人が造っていく
「いい米」と「いい水」で造られる、白岳の本格米焼酎。
その120年以上積み重ねられてきた歴史や味わいを次の世代につないできたのは、いつの時代も酒造りに掛ける職人たちでした。
ここからは本格米焼酎の造りの工程を垣間見ながら、白岳の輪郭を造り続けてきた職人たちの横顔に迫っていきたいと思います。
醪(もろみ)、そして仕込み
本格米焼酎は蒸した米に種麹を振りかけて造る麹(こうじ)に、水と酵母を加えて醪(もろみ)へと変えていくところから始まります。
この米焼酎の味を左右する醪(もろみ)を造る作業を「仕込み」と呼び、細かな状態変化や温度変化に気を配りながら、職人たちの手で醪を一定の状態へと保っていくのです。
職人たちはその手に伝わる櫂棒(かいぼう)の感触や表面で弾ける発酵の音を確かめながら、最高の醪を無心で仕込んでいきます。
こうした仕込みを経てしっかりと発酵した醪(もろみ)は次の工程、蒸留へと進んでいきます。
蒸留が造りだす焼酎の原石
蒸留では醪(もろみ)を蒸留機で熱にかけ、まずアルコール分だけを蒸発させます。その後、冷却して液体状のアルコールを抽出し、原酒(げんしゅ)と呼ばれるブレンド前の米焼酎を製造していくのがこの工程です。
この蒸留で最も大切になってくるのが、職人たちの五感。
計器だけに頼るのではなく音や香りの変化を捉えながら、蒸留機の中で醪(もろみ)が焼酎へと変わっていく様子を全身で感じ取っていきます。
一瞬の気の緩みが、タンクの醪(もろみ)を全て駄目にしてしまうこともある蒸留作業。ベテランの造り手でも、その集中を切らすことは出来ません。
こうして、幾人もの職人たちに見守られて蒸留される米焼酎の原酒。
生まれたての香り高い原石ともいえる焼酎は、タンクの中でしっかりと熟成されながら、今か今かとブレンドの時を待ちます。
ブレンダーが仕上げる米焼酎の味わい
蒸留された原酒は送られたタンクで貯蔵熟成され、他の様々な原酒とのブレンドを経て、不純物を取り除く濾過(ろか)が行われていきます。
この工程で、白岳の味を守るのがブレンダーと呼ばれる職人たちです。
官能検査と呼ばれるきき酒を通じて、日々変わる味わいや香りの違いを感じながら自らの舌と嗅覚で焼酎と対峙するブレンダー。
自身の感覚を頼りにブレンド率や濾過の具合を決定し、それまで原石だった焼酎を白岳本来の味わいへと磨き上げていきます。
そして焼酎の味を決めるだけではなく、その品質を守りぬくこともブレンダーの大切な役割。タンクの中で起こる些細な変化を捉えながら、変わらぬ味を造り続けていくのです。
職人たちが造りのバトンを繋げてきた米焼酎は、こうしてブレンダーたちの手によって仕上げられ、最後の工程へと渡っていきます。
製造と加工-焼酎が製品になる瞬間-
最後は、造り上げられた本格米焼酎が瓶に充填され、わたしたちがいつも飲んでいる白岳しろへと変わっていく瞬間です。
この製造ラインで、焼酎が詰められた瓶に一枚ずつ「しろ」のラベルが貼られるなかで、一つ一つの製品に魂が込められていきます。
お客様に届く製品を造るこの工程においても、やはり主役となるのは「いい人」たち。
品質を守る最後の砦として、ラベルのズレや瓶の不具合などを目視で確認しながら、お客様に出荷できる状態か秒単位で見極めていきます。
このラインで製品化された白岳しろはこのラインで多くの人から見守られた末に、日本中のお客様のもとへと旅立っていくのです。
そして、この機械では作ることの出来ない詰め合わせのセットや海外向けアイテムを手仕事で組み上げるのが商品加工の現場。
専用資材の組み立てから商品の据え付けまで、その全ての工程が手仕事によって丁寧に紡がれていきます。
酒を造る職人、仕上げる職人、最後まで見届ける職人
一本の白岳しろは、こうした日々変わらぬ仕事に全身全霊で打ち込む職人たちの仕事によって、今日もその産声をあげています。
未来をも造りだす職人たち
今回は「いい米、いい水、いい人で」という哲学を通じて、土地が造り上げた米や水で仕込まれた白岳の本格米焼酎数が、数多の職人たちの手で磨き上げられていく様子を紹介していきました。
この変わらぬ造りの信念こそ白岳が120年以上貫き続けてきた矜持であり、上質への構え。そして、職人たちはいまこの瞬間にも昨日の酒を超えるために目の前の造りと闘い続けています。
今までの白岳を造ってきたもの、これからの白岳を造っていくもの。
それは、時代が変わっても「いい酒を造りたい」という職人たちの意志にほかなりません。だからこそ、職人の魂に息づく情熱の灯だけは決して絶やすことなく、これからも輝かしい本格米焼酎の未来を造っていきます。
もちろん「いい米、いい水、いい人で」