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春の釣り部は船に揺られて、桜色の鯛に夢を見る。大人気の釣り「タイラバ」に挑んでビギナーズ・ラックの向こう側を目指してみた

自分たちで釣った魚をその場で料理して、米焼酎で流し込む!

そんな贅沢な一杯を楽しむために立ち上げた「白岳しろ 釣り部」は奇跡的なビギナーズ・ラックにも恵まれ、これまでコノシロやキスといった季節ごとの魚を次々と釣り上げてきました。

キス釣り

ただ、人間とはどこまでも欲深い生き物…。

過去2回の釣り部が絶好調だったこともあって、最初は「釣れたら万々歳」と考えていた私にも次第にこんな欲が生まれ始めます。

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「もっと大きくて、グイグイ引く魚と格闘してみたい…」

まだエサも満足に付けられない初心者ですが、こんな私でも大物を釣る方法はあるのかを後輩で釣りの師匠でもある髙森君に相談してみることに。

釣り部のエース・髙森氏

--というわけなんだけど、そんな都合のいい釣りなんて無いよね…?

髙森/いや、ピッタリなのがありますよ。

今人気の「タイラバ」っていう釣りなんですけど、エサも付けなくてOKですし、仕掛けを落として巻き上げるだけなので初心者でも釣れます。実際に見てもらったほうが早いので、仕事終わりに説明しますね。

こうして就業後にやって来たのが、お馴染みの地元釣具店。

タイラバの売り場に到着すると色とりどりの仕掛けが壁全面に並びます。

髙森/タイラバはエサじゃなくてこの仕掛けで釣るんですけど、こんな風に先端にヘッドっていうオモリが付いていて、まずはこの仕掛けを海底まで落とす所から始まるんです。

タイラバの仕掛け

髙森/タイは基本的に上から落ちてくるものに興味を持つので、カラフルな仕掛けで関心を引いて、底に着いた瞬間に一定の速度で巻き上げます。

すると、エサだと思い込んだタイがハリに食い付くって寸法なんですね。

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髙森/仕掛けを選ぶときの大まかなポイントはカラーと重さです。

あんまり軽い仕掛けは底を取る前に潮に流されてしまうので、今回は150グラム前後の重さにしてカラーは熊本で人気の赤×黒を中心に色んなタイプを揃えてみましょうか。

髙森/あと、タイラバ最大の特徴は「船」で釣ることなんですよ。

天草にいつもお世話になっている船長がいますから、その人に頼んでさっそく今度の休日に船釣りへ繰り出してみましょう!ちなみに朝5時半集合なのでしっかりと起きてくださいね(笑)。

AM5:30 天草・鬼池港

こうして眠い目をこすりながら集合したのが、天草の鬼池(おにいけ)港。

今回はこの熊本におけるタイラバの聖地で長年船を動かしてきた亀島丸さんにお邪魔して人生初の船釣りに挑戦していきます。

安全のためのライフジャケットに袖を通したら、頼れる後輩・髙森君に手伝ってもらいながらタイラバの仕掛けをセッティング。

そして辺りがすっかり明るくなってきた頃、おもむろに船が出港しました。

10分ほど沖に向かって走ると、有明海に登る美しい朝日がお出迎え。

この雄大な光景を見ただけでも船に乗って良かったと心から思えますね!

しばらくして船は魚群探知機の魚影が濃くなった最初の釣り場に到着。

ここで初めて経験者の髙森君からタイラバのレクチャーを受けていきます。

髙森/まずは仕掛けが底に着くまで糸を出して、着底したタイミングと同時に巻き上ることを意識してください。

大事なのは一定の速度で巻き続けること。例えアタリを感じたとしても、巻きのスピードを変えないのが魚に逃げられないためのポイントです。

ここから海底の魚たちとコミュニケーションを取るように「落としては巻き、落としては巻き」の地道な動作を繰り返していきます。

確かに操作も簡単で、初心者の私もそれっぽく仕上がってる風な感じです。

そうしている間に、隣には早速アタリが!

髙森/きたきた、キジハタです。九州ではアコウともいいますが、刺身や煮付けなんかにしても物凄く美味しい魚ですよ。

タイラバって、タイ以外にも色んな魚が釣れるのが面白いんですよね。

キジハタ(アコウ)

その勢いで周りも順調に釣り始め、いつの間にか船全体が絶好調モード。

一方、皆と同じように巻いているはずなのに私には全く反応がありません。

こういう時は少しでも変化を求めてあがいていくしか無い!

ということで、これまでとは違う仕掛けを付けてみたり…

リールを巻くスピードを変えてみたりと自分なりの試行錯誤を続けます。

しかし、出港から3時間が過ぎたこの時点でも釣果どころかアタリもゼロ。

まだあわてるような時間じゃない…

そんな風に自分に言い聞かせながらもさすがに焦りを感じ始め、「ボウズ」という恐怖の3文字が少しずつ脳裏をよぎっていきます。

AM11:00  船上に漂う悲壮感

釣り場を移動中

そして、タイラバ開始から約5時間が経過したAM11:00。引き続き、竿先がピクリともしない私は暗いムードに包まれていきます。

そして、ここで突然降り注いできたのが大粒の雨。同時に冷たい風が容赦なく吹き始めて船上は最悪のコンディションに。

震えるような寒さ、雨で濡れる体、何よりも釣れない情けなさ…

船釣りの洗礼を浴びて一瞬心が折れそうになりますが、セッティングしてくれた髙森君や読者の期待に応えるために必死でリールを巻き続けます。

そんな想いが通じたのか徐々に雨も弱まってきたその時…。

なんと、私にもこの日初めてのアタリが!

竿がかすかに反応する程度の小さなアタリを引き寄せると、水面から顔を現したのは綺麗なカサゴちゃん。

この日初めて釣れた安堵感から私の顔にも自然と笑顔が広がります。

ただ一匹釣れたことは嬉しい反面、白岳しろと一緒に食べるタイを釣り上げられていないことで私の中にはどうしても心残りが…。

これ以降もなんとかタイを釣るためにトライし続けたものの、私の竿は一向に震え無いままついに港へ帰る時刻が近づいてきます…。

それでもここで諦めるわけにはいかない

無情に過ぎていく時間に抗いながら、最後の大逆転を信じて愚直に仕掛けを海の底へと落とし続けていきました。

PM12:55  そして、残り5分

本来であれば12時前後には終了している所をまだ釣れていない私への気遣いもあって、いつもより1時間近く長めに釣らせていただいている状況。


時刻は12:55を回って、残り時間はあと5分。


誰もが今日はこのまま終了だと帰り支度をしていた…


その時でした!!!!

き、来てる!?!?

明らかにこれまでとは違う大きなテンションが竿に掛かって、体全体が前のめりに引き寄せられます。

こ、これ。かなり引いてるんだけど!!!

髙森/先輩、落ち着いてください!

いま焦って巻いたら魚が逃げますよ。網は持ってきますから、安心して最後までゆっくりと巻き上げましょう!

こうして水中の見えない相手と格闘すること約5分。

ついに力尽きた桜色のタイが海面から顔を出しました!

いよっしゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!

天草のタイ採ったどーーーーー!!!!!

アディショナルタイムでのギリギリの逆転劇に興奮が冷めやらない私。

相棒の髙森君も驚きを通り越して「信じられない」というこの表情です。

髙森/いやぁ、この時間帯に釣り上げるって相変わらず持ってるなぁ…。

これくらいの大きさだったら普通に刺身を引けると思いますよ!

船長に改めてサイズを計測してもらうとジャスト35センチという大きさ。

人生で初めてタイを釣り上げたという興奮をどうしても抑えられないまま、船はいざ港へと帰っていきます!

PM13:45  帰港

こうして約8時間ぶりに帰ってきた鬼池港。

普段は魚を捌くサービスはありませんが、今回は船長・井筒さんのご厚意で特別に船上で刺身を引いていただけることに。

釣ったタイ

文字通り「まな板の上の鯛」を華麗な手つきで颯爽とおろしていきます。

血抜きして鱗を取られたタイがあっという間に捌かれていく様子は、素人からするとまさに圧巻の一言。

その姿を見るだけで海で闘った相手へのリスペクトが自然と溢れてきます。

そして調理開始から約5分程度。

満を持して完成した船上の食卓がこちら!

見てください、捌きたての美味しそうなタイの刺身を!

さっきまで海の中で生きていただけあって身が完全に透き通ってます。

今回はタイのさっぱりとした味わいをダイレクトに感じていきたいのでしろはロック注いでいくことにしました。

まずは穫れたてのタイを贅沢に掴んで、豪快に一口でいただきます!

う、旨い…。

これは旨すぎるよ…。なんだこの食感…。

ほのかなタイの香りと跳ね返してくるような身の弾力が口の中に広がって、これまで味わったことのない天然物の迫力に思わず圧倒されます。

そしてこのタイに合わせた、しろロックがまた格別なんですよ!

くぅー、これはたまらんバイ…。

天国タイ。最高タイ。

タイ、しろ、タイ、しろ、タイ、しろ…。

この素晴らしいリズムの中から溢れ出す天然ダイの旨味に気が付くと箸が止まらなくなり、すっかり我を忘れて食べ進めていました。

最後は共に闘った船長や髙森君とタイを一緒に食べながら、今日の思い出をみんなで語らい合って本日のタイラバ全工程が終了。

最高のフィナーレを思い出しながら、噛み締めるようにしろで締めました。

というわけで、今回の釣り部は初めての船に乗って「タイラバ」という釣りにチャレンジしてきましたがいかがでしたか?

次回はもっと難しい釣りに挑戦してレベルアップしていきますので、ぜひ期待してくださいね。それではまた次の釣り場でお会いしましょう!