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本格米焼酎の味を決める“造りの方程式”を徹底解剖!米・麹・酵母という3つの変数から、美味しいお酒の設計図を紐解いていく

一口に米焼酎と言っても、実に色々なタイプがあります。

さっぱりとしておだやかな味わい、フルーティーで華やかな香り、焼酎らしい芳醇な呑み口、そして一風変わった個性派まで。

風味と香りの組み合わせ方によって、同じ種類のお酒とは思えないほど多様な表情を見せるのも米焼酎ならではの魅力。

こうしたタイプ別の特徴については、以前noteでも取り上げました。

そして、今回は逆方向からのアプローチです。

本格米焼酎の造り手たちは一体どのような方程式を駆使して、同じ原料からタイプの全く異なるお酒を生み出しているのでしょうか。

焼酎の味わいを左右する様々な要素の中でも、特に大きな決め手となるのが米、麹(こうじ)、酵母(こうぼ)になります。

一般的にはあまり知られていませんが、職人たちはこの3つの変数を巧みに操りながら理想のお酒を目指して試行錯誤を繰り返しているんです。

プロの造り手たちが頭の中で描く、本格米焼酎の設計図。

この記事では改めて米(原料)、麹(こうじ)、酵母(こうぼ)について掘り下げながら、一つひとつの要素がどのように作用してお酒の設計図を構成していくのかを紐解いていきます。

焼酎の骨格をつくる「米」の役割

設計図づくりは、もちろんお米からスタート。日本酒の場合は、酒造好適米という大粒で割れにくいものを使うことが一般的です。

しかし、本格米焼酎の場合は商品ごとに米の銘柄や品種を厳選するということはあまりありません。アルコールを抽出して原料の香りや風味を楽しむ蒸留酒では、米の違いよりもその磨きが重要になるからなんですね。

具体的には、米の磨き方によってお酒を飲んだときに感じるコクや厚みといったボディという要素に違いが発生します。

ちなみに日本酒の精米歩合は約70%前後だと言われており、大吟醸になると50%以上磨いたお米で造られます。

そんな中、本格米焼酎の精米歩合は大体85~90%程度。

日本酒では雑味の原因として削られるたんぱく質脂質も、蒸留して造る米焼酎にとっては米の旨みを引き出すための大切な要素。造り手は磨きを調整することで、コクと飲みやすさのバランスを決めていくんです。

そうした米の磨きによる呑み口の違いを最も比較しやすいのが、当社代表銘柄の白岳白岳しろです。

どちらも原料には国産米を使用していますが、白岳はあまり米を磨かずにふくよかな風味を全面に押し出している一方で、白岳しろはより精白度の高い米で仕込むことでスッキリと洗練された味わいを表現しています。

本格米焼酎にとって、原料のお米は飲みごたえや口当たりといったお酒の骨格を作り上げるための大事な役割を果たしているんです。

そして、原料を選ぶ上ではコストを考えることも重要です。

精白度の高い米を使うと風味が洗練されていくのと同時に、原料を削る部分も増えるので材料費が高くなります。そうなると、美味しいお酒でも消費者が手に取りにくい価格帯になってしまうことも。

例えば日本酒で華やかな香りを出すときは米を磨くのがセオリーですが、吟醸香が特長の白岳KAORUはコストを抑えるために米を磨かずに酵母によってフルーティーな香りを出すことを実現しました。

原料にはどこまでもこだわりたい、でも多くの人に楽しんでもらうため価格は出来るだけ抑えたいという造り手のジレンマ。

こうした相反する要素を造りの上でバランスさせることも、お酒の設計図を構成していく上で職人たちに求められる能力になります。

先人が繋いできた「麹」のバトン

昔から日本酒や焼酎の世界には
「一麹(いちこうじ)、二酛(にもと)、三造り(さんつくり)」
という格言もあり、麹の出来がお酒の質を左右するとされてきました。

では、本格米焼酎造りにはどんな麹が適しているのでしょうか。まずは日本のお酒に使われている代表的な麹を紹介していきます。

製麹(せいきく)の様子

酒造りに使用される麹は主に黄麹・黒麹・白麹の3タイプです。

こんな風に一列に並べると、あたかもこの3つから最適なものを選んだような印象を受けますよね。しかし実際は、本格米焼酎に使われる主流の麹は時代と共に黄麹→黒麹→白麹という変遷を辿ってきました。

ここからは、多くの本格米焼酎に白麹が採用される理由を説明をします。

白麹(出麹)

実は、明治の終わりまで日本酒も焼酎も全て黄麹で造られていました。

黄麹で造られたお酒はフルーティーで爽やかな香りが特長ですが、糖化の際にクエン酸を分泌しないため雑菌が繁殖しやすく、気温の高い九州では腐敗が起こりやすいという難点がありました。

そのため、黄麹を使っていた時代は球磨焼酎も気温の上がらない冬場に仕込んでいたといいます。そんな不安定な環境で行われていた焼酎造りの救世主として、昭和初期に人吉球磨に伝わってきたのが黒麹です。

明治43年に、「麹の神様」と呼ばれる河内 源一郎 [1883-1948]さんが泡盛に使われていた麹菌からクエン酸を分泌する黒麹を生成してからは、焼酎造りの安定性が一気に向上しました。

黒麹の特徴は、どっしりとしてコクのある力強い味わい。

本格焼酎の中でも「黒〇〇」という銘柄に採用されていることが多く、沖縄の琉球泡盛も全てこの黒麹によって仕込まれています。

麹室の中の様子

そして、黒麹を培養する中で突然変異として発見されたのが白麹でした。

白麹は黒麹と同じくクエン酸を分泌するため雑菌に強く、すっきりと軽快な味わいで誰でも飲みやすい焼酎が出来る麹。また、黒麹に比べると職人が扱いやすいという利点もあります。

球磨焼酎の中には黄麹や黒麹で仕込んだお酒も多くありますが、その殆どは造りが安定して米の風味を活かせる白麹を採用しています。そして下記が麹の特徴をまとめた一覧です。

とはいえ、今後こうしたトレンドにも変化が起こるかもしれません。

白麹の焼酎から発生した第一次・第二次焼酎ブーム(昭和)、黒麹の焼酎をきっかけに爆発的に全国でブレイクした第三次焼酎ブーム(平成)、そして温度管理が進んだ近年の現場では黄麹の魅力も改めて見直されています。

お酒の設計図は常に一定ではなく、先人たちの不断の努力によってそのページは書き換えられてきた。そんなことを麹の歴史は教えてくれています。

「酵母」が生み出す、香りの世界

本格米焼酎の設計図の最後は酵母(こうぼ)です。

酵母の主な役割はアルコール発酵によって麹をお酒へと変化させることですが、焼酎の個性的な香りを抽出するための大事な要素でもあります。

酵母由来の香りは様々ありますが、この頃よくお店などで見かける果物に例えられた香りも実は酵母の力なんです。

代表的な酵母の種類としては、バナナのような香りが特徴の酢酸イソアミル、リンゴやパイナップルのような吟醸の華やかな香りとして知られるカプロン酸エチルの2タイプがあります。

専門的な用語で少し難しく感じるかもしれませんが、ここでは酵母によって焼酎の香りが設計されていることを理解いだだければ充分です。

そして、酵母は大きく協会系酵母と自家培養酵母に大別されます。

協会系酵母は日本醸造協会が頒布している酵母で、焼酎以外の日本酒やワインにも広く活用されています。白岳に使われている熊本酵母(焼酎用)もこうした酵母をベースに独自で培養したものなんですよ。

一方、酵母を自社で開発する焼酎蔵はあまり多くありませんが、自分たちの目指す理想の味や香りを造るために自社で手掛ける場合も。

ちなみに、白岳しろ白岳KAORUは自家培養酵母を採用しています。

白岳しろは洗練された味わいを表現するために研究を重ね、蔵付き酵母を培養して現在の酵母が生まれました。また先述の通り、白岳KAORUも独自の香りを抽出するために吟醸系の酵母を独自開発しているんです。

最近は若い人たちのハイボール人気を受けて本格焼酎のトレンドも“香り系”に少しずつシフトしており、これまで以上に酵母の役割は大きくなってくいくと考えられています。

また、ワイン酵母を焼酎にも活用するなど、麹と同じように既存の常識を覆すような新たな試みも少しずつ広がりをみせているんです。

本格米焼酎の命でもある香りをコントロールする「酵母」。今後もその技術や変化には目が離せませんね。

すべては調和から生まれる

今回は「本格米焼酎の設計図」と題して、米・麹・酵母という3つの要素を見てきましたがいかがでしたか?

実際の造りは様々な要素がもっと複雑に絡み合いますが、まずはイメージだけでも感じ取っていただければと思いこの記事を手掛けました。

そして最後にお伝えしたいのが、造り手と調和というテーマです。

どんなに上質な原料を使って、画期的な麹や酵母で仕込んだとしても最高のお酒が出来るとは限りません。酒造りで最も大切なのはハーモニー。様々な要素を調和させながら、理想の一本へと昇華させていく力なんですね。

そして、造り手が存在する意味もそこにあります。

自身の経験やセンスを頼りに足し算や引き算を繰り返しながら、理想の焼酎に近づこうとする飽くなき探求心。どれだけAIが発達しても、人間の感覚でしか辿り着けない境地が酒造りには存在していると信じています。

いい米、いい水、いい人で。

これは当社が掲げるコーポレート・メッセージですが、いい原料や仕込みはもちろん、造り手の想いを大切にしながら今後もみなさんに喜んでいただけるような米焼酎を届けていきたいと思います。

これからも進化を続ける「白岳の設計図」にぜひご期待ください。

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