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4年ぶりに開催される「球磨拳」世界大会に初参戦!人生初の世界タイトル獲得に向けて、地元の猛者たちと全力バトルを繰り広げる

突然ですが、みなさんは「世界大会」に出たことはありますか?

最近では白岳KAORUが世界的なコンペティションで様々な賞を獲得するなど当社の米焼酎が海外でも高い評価を得ていますが、私個人は残念ながら世界の舞台で戦った経験はありません…。

白岳KAORU

そんなグローバルとは無縁な生活を送っていたある日のこと、私の目に突然このインスタ投稿が飛び込んできました。

「球磨拳 世界大会2024」参加者大募集!!

地元以外の方は古武術か何かの大会かと思われるかもしれませんが、球磨拳とは人吉球磨に昔から伝わる「じゃんけん」のような遊びで、実は文化庁が推進する日本遺産にも登録されるほどの長い歴史があるんです。

投稿を見た瞬間、こんな思いが頭をよぎります。

“これは世界大会に出場できる、人生最大のチャンスかもしれない…”

こうして世界という響きに胸の高ぶりが抑えられなくなった私は、気がつくと出場に向けて白岳のハッピに袖を通していたのでした。

ただ、世界大会に出場するといっても球磨拳に関しては全くの素人。

競技経験もなければルールもよくわからない状況で世界の強豪たちと戦えるのか不安を抱えながら、いざ決戦の地へと赴きます。

ということで、今回は新型コロナウイルスの発生以来4年ぶりに開催される球磨拳の世界大会に初参戦。人生初の世界タイトルを狙いながら、その醍醐味を体当たりで届けていきます!

伝統を未来につなぐ人々

左から島田さん、那須会長、落合さん

この日、会場に到着した私たちを温かく迎えてくださったのが、地域の若い世代に伝統のバトンをつなぐ球磨拳 保存会のみなさんです。

世界大会では運営やジャッジを担当される御三方に、球磨拳のルーツや大会で勝つためのコツについて伺っていきます。

那須会長

--那須会長、本日はよろしくお願いいたします。初めに球磨拳の歴史について教えていただけますか?

那須会長/球磨拳は江戸に向かう参勤交代の休憩中に、下級武士たちの間で生まれた遊びだと言われとるんですよ。

まあ、長い道中の暇つぶしだったんでしょうな。当時あまりにも武士たちがのめり込み過ぎたものだから、人吉球磨を治めた相良藩が球磨拳を控えるよう法度を出したという一説もあるくらいなんです。

出典:「たらぎたらりら」(多良木町)

那須会長/それから少しずつ形が変わって、我々の若い頃は球磨焼酎を生(き)で飲みながら球磨拳で勝負するのが定番でした。

昔は二次会やカラオケも無くて、ひたすら飲み続けながら夜中2時とか3時まで球磨拳で盛り上がったもんです。負けた方が飲むルールだから、飲みたい人はわざと負けたりしてね。酒飲みってのは面白いもんですよ(笑)。

ただ、今では飲み会で球磨拳をする機会もほとんど無くなりました。だからこそ、こうしたイベントや小学校での指導を通じて、競技として楽しめる環境を守っていくことが保存会の使命でもあるんです。

島田さん

--「球磨拳で勝つコツ」をこっそり教えていただけませんか…?

島田さん/まずはしっかりと手の形を覚えることでしょうな。普通に手を出せるようになって、初めて相手を見る余裕が生まれますから。

そして、慣れてきたら対戦相手の“クセ”を読むことも大事。

長く勝負をしていると必ず相手の傾向が見えてくるんで、そのパターンを突くことが勝つためのポイントかな。同時に自分のクセも見られているので、少しずつ手を変えて相手から読まれないようにしないといけません。

落合さん

--難しそうですね…。今日が球磨拳初めてなんですけど大丈夫でしょうか?

落合さん/今日は大会前に球磨拳の遊び方をみんなで学んでいきますし、難しい部分は私たちがフォローしていきますから安心してよかですよ。

あと、今回出てもらうのは未経験者や小学生たちも参加する「初心者の部」だから、まずは球磨拳の楽しさを体験して少しずつ慣れていけば大丈夫。優勝目指して頑張ってください!

“球磨拳”のルールを覚えよう!

本番前に参加者が集合して、さっそく球磨拳のレクチャーがスタート。

司会の方と一緒にみんなで楽しく練習を重ねていきます。

ここで一旦ルールを説明すると、球磨拳は基本的に1対1で戦うゲームで、じゃんけんのようにお互いの出す手によって勝敗が決まります。

じゃんけんはグーチョキパーの3種類ですが、球磨拳はなんと倍の6種類!

出典:「たらぎたらりら」(多良木町)

0~5までの数字を同時に出して相手よりも一つだけ大きい数を出した方が勝ちで、それ以外はあいこにカウントされるんです。※0は5に勝つ

出典:「たらぎたらりら」(多良木町)

そして、どちらかが連続で勝った瞬間に勝利が確定します。

ただ、一回でもあいこを挟むとそれまでの勝ちはリセットされるので、なかなか勝負がつかないのも球磨拳の面白さ。長期戦の中で相手のクセを読んで手を出すことが、勝つための必須条件になってくるんですね。

デモンストレーション

通常、球磨拳で負けた方はあらかじめ配られた拳棒を取られて焼酎を飲むのですが、今回は未成年者も参加しているのでお酒は一切無し。

その代わりに初心者の部では拳棒ならぬスティックタイプの駄菓子を取り合って、最後に一番多く集めた人が王者となります。

最初に3本もらえます

こうして、まだ若干の不安を残しながらも球磨拳のインプットが完了。

ここからは世界一(初心者の部)を目指して、地元に集まった猛者たちと実際に拳を交えながら熱い戦いを繰り広げていきます!

世界一という頂を目指して

いよいよ戦いの幕が切って落とされた球磨拳 世界大会。

記念すべき初戦は、この日のために名古屋から駆けつけたというこちらのナイスガイと拳を交わしていきます!

実はこの方、ローカルメディア運営などを通じて全国の地域創生を推進するプロデューサーの一人。冒頭に紹介した大会Instagramの立ち上げも含めて、多良木町を盛り上げるために奮闘しているんです。

槻木集落メディアサイト

ただ地元の蔵元代表としては、そう簡単に勝ちを譲るわけにはいきません。

まずは互いのプライドを賭けて手持ちの駄菓子を場に差し出します。

そして高まる緊張の中、球磨拳スタートを告げる「ひぃ、ふぅ、さんの!」という発声とともに熱い拳が振りかざされました!

開始直後から、球磨拳のとんでもないスピード感に圧倒される私。

うまく相手のクセを読もうと意気込んでましたが、とんでもない。自分の手を出すことに精一杯で勝ってるのか負けてるのかすらもわかりません。

そして、お相手の変幻自在なテクニックといっちょっ(一本)!という威勢の良い声に圧倒され、あっという間に負けが積み重なっていきます…。

く、悔しい…。なんとか一つでも勝ちを掴み取りたい!

そんな思いを胸に、ひたすら拳を振るい続けていたその時でした。

いっちょっ(一本)! 

いっちょっ、に(二本)!

え、もしかして…。私が勝った感じですか?

審判/(コクッ)

いよっしゃぁぁぁぁぁ!!!

何度も拳を振りかざしてやっと掴んだ嬉しい球磨拳の初勝利。思わずこの日一番の笑顔が溢れ出ました。

それまでの負けを少しだけ挽回した所でちょうど一回戦が終了。死力を尽くした相手に深々と礼をして次なる戦いへと向います。

迎えた次戦は、地元の女性拳士との一騎打ち。

前回の激戦を経て球磨拳の空気感にも慣れてきたのか、相手の仕草を観察できる余裕も徐々に生まれ、少しずついい勝負が出来るようになってました。

だからといって、球磨拳はそう甘いものではありません。

三戦目は地元のクラブ活動で腕を磨いている小学生に見事に大敗し、日頃から練習している選手のレベルの高さを身を持って実感させられます…。

ただ、この辺りから目の前のお相手と純粋に球磨拳をするのが楽しくなって勝敗のことはすっかり忘れていったんですよね。

勝ったり負けたりを繰り返すうちに他の参加者とも自然にコミュニケーションが生まれ、会場に素敵な笑顔が溢れ始めていきます。

かく言う私も、初の世界大会に身構えていた自分はどこへ行ったのやら。最後は全身で喜びを表現しながら球磨拳の世界に没頭していました。

さて、こんな感じで最高に盛り上がった球磨拳 世界大会の結果は果たしてどうなったのか!?全ての試合が終わり、最後は表彰式へと移っていきます。

そして、結果発表

期待いただいた皆様、誠に申しございません…。

最終的には貰った駄菓子3本を1本まで減らしてしまって、優勝はおろかこれといった見せ場を作れないまま悔しい結果に終わってしまいました。

ちなみにこちらが結果発表の様子です。

この日最もいい成績を残したのが写真奥の選手で、袋に入らないほどの駄菓子をゲットしていました。本当におめでとうございます!

一方の私はというと、世界との差をこれでもかと感じた課題の残る大会になりました。次回はもっと練習して必ずリベンジを果たしたいと思います。

今回は4年ぶりに開催された球磨拳の世界大会を体当たりでレポートしてきましたが、いかがでしたでしょうか?

今回は悔しい結果に終わりましたが、次回こそ初心者の部で優勝を果たせるよう練習を重ねていきますので、今後の成長にぜひご期待ください!