ハイブリッドバーテンダー深水 稔大が「米焼酎カクテル」で魅せる自由な遊び心、そして故郷・熊本への遥かなる想い/and SHIRO#2
前回スタートした新企画「and SHIRO」。
日本が誇る逸品や人々の魅力を再発見していくWEBマガジンとして、初回は銀座の老舗和菓子店 空也と本格米焼酎のペアリングをお届けしました。
そして、第2回となる今回訪れたのも日本最大の商業地 東京・銀座。
日本のBAR文化を牽引してきたこの地に、2022年オープンしたオーセンティック・ミクソロジーバー「Bar LIBRE GINZA」が今宵の舞台です。
都会の喧騒を思わせない熱帯植物や時おり夜空を掠める流れ星。
「銀座の地下に潜む秘密のジャングル」をコンセプトにした店内では、オリジナルのシグネチャーカクテルを中心に常時300種以上のお酒が提供され、銀座に息づく人々にとって宿り木のような空間が広がります。
この格式と非日常を兼ね揃えた都会の密林 Bar LIBRE GINZAにこのたびゲストバーテンダーとしてお呼びしたのが、私たちと同じ人吉で生まれ育ち現在は東京のバーシーンで活躍する深水 稔大さんです。
世界のお酒はもちろん、地元熊本の本格米焼酎にも精通する深水さんにカクテルプロデュースをお願いした銘柄が「KOMORIUTA」。
甕(かめ)で3年以上熟成させた古酒で、ボトルには熊本県球磨郡に古くから伝わる「五木の子守唄」をモチーフにした音符があしらわれています。
東京のバーテンダーと熊本の本格米焼酎の出会いから、どんなカクテルが生まれるのか。深水さんにテイストの異なるカクテルをご紹介いただきながら、バーという場所の持つ魅力について語っていただきました。
3種のKOMORIUTAカクテル
-深水さん、今日はどんなカクテルが楽しめるんでしょうか
深水/本日はご家庭でも手軽に再現していただけるよう、あまり難しくないレシピで3種類のカクテルをご用意いたしました。まず始めに、KOMORIUTAで作るレモンサワーからお試しいただきましょう。
“ララバイ”レモンサワー
深水/一般的なレモンサワーはシロップで甘みをつけることが多いのですが、今回は私がアンバサダーも務めさせていただいているトニックウォーターで甘みや香りをつけていきたいと思います。
深水/爽やかさとフルーティな香りが特長の英国産エルダーフラワーが入ったトニックウォーターをつかうことで、スッキリとした口当たりの中に華やかさが感じられる高級感あふれるレモンサワーを意識しました。
深水/コンセプトは「少し甘みのある大人のレモンサワー」です。
KOMORIUTAというお酒を使っていることもあって、ララバイ(子守唄)レモンサワーという名前をつけてみました。食中はもちろん、おやすみ前にもスッキリと楽しめる味わいを目指しています、どうぞ。
深水/一杯目から飲み続けるのも美味しいですが、KOMORIUTAの度数が30度と少し高めなので、高級感のある食卓やレストランでしっとりと楽しんでいただくようなスタイルが個人的にはおすすめですね。
深水/レシピも簡単で材料も揃えやすいものばかりですので、ご自宅でもお試しください。
檜(ひのき)ミュール
深水/2杯目に楽しんでいただきたいのが、“檜(ひのき)ミュール”です。名前からご察しの通り、カクテルの定番「モスコミュール」をKOMORIUTAと檜の香りでアレンジしてみました。
深水/あまり知られていませんが、熊本県は檜の産出額全国一位なんです。その中でも私が生まれ育った人吉球磨は檜の一大産地で、良質な檜が取れる土地として有名なんですよ。
深水/そんな故郷・人吉へのインスピレーションから生まれたカクテルが、この“檜ミュール”です。香りを存分に楽しんでいただくために、檜をつかったリキュールで和のエッセンスを加えています。
深水/もう一つのポイントはカップに檜ボールを浮かべてあげる事で、香りだけでなく視覚からも故郷・人吉の風景を楽しんでいただけるようにアレンジしたところでしょうか。どうぞ、召し上がってください。
深水/口に運んだ瞬間に檜の香りが立ち込めてきて、まるで枡でお酒を飲んでいるような感覚になる不思議で魅力的なカクテルだと思っています。
檜のビターズや檜ボールはネットショップなどでも購入できますので、ぜひ一度挑戦してみてください。
おやすみのモンブラン
深水/最後は栗をつかった“おやすみのモンブラン”を飲んでいただいて、デザートカクテルの世界を味わっていただきましょうか。
深水/先ほど紹介した檜と同じく、人吉球磨は栗も全国2位の生産量を誇っていて、特にやまえ栗というブランド栗が有名なんです。
深水/一日の終り、ほっと一息つきたいおやすみ前のタイミングで楽しめるように“おやすみのモンブラン”というネーミングにしました。もちろん、この名前もKOMORIUTAを意識してつけているんですよ。
深水/今回はむき栗・生クリーム・シロップで、まるで本当にモンブランを食べているような食感や風味を楽しんでいただきたいと思って作りました。
深水/ストローでカクテルを飲んでいただいたあとに、デザートとしてむき栗やクリームの甘さを味わっていただければと思います。
深水/栗の滋味あふれる甘さは、お酒との相性もとても良いんです。この甘さの中にも故郷・人吉を表現しましたので、最後までお楽しみください。
バーテンダーとしての「原点」
-深水さん、どれも素敵なカクテルばかりで感動しました
深水/KOMORIUTAのようにボディがしっかりとして風味が穏やかなお酒は、カクテルのベースとしてとても使いやすいんです。度数も30度と焼酎の中では高めなので、お酒を入れすぎずにアレンジが効くのもいいですね。
熊本の食材やお酒をつかって地元に貢献できるような仕事をしたいと日頃から考えていたので、今回のカクテル作りは僕も楽しかったですよ。
-深水さんが、バーテンダーになろうと思ったきっかけは?
深水/僕は学生時代に熊本のバーでアルバイトをしていたんですが、そのお店のマスターがとにかく格好良い人だったんですよ。身に着けているものから、仕草、生き様まで全てが大人の男って感じの方でした。
その時感じた「自分もこんな格好良い大人になりたい」という憧れが、僕がバーテンダーを志した原点だったかもしれませんね。
そんな憧れから東京に出てきて、イタリアンレストランやバーでの修行を重ねました。色々な仕事に取り組みましたけど、やはり僕はバーテンダーとしてお客様と接することが一番好きです。
深水/月並みかもしれませんけど、やっぱり「人」が好きなんでしょうね。
その日によってご来店いただくお客様や会話の内容は変わりますが、その場にいる方々が交わることで生まれる化学反応のような空気の中に身を置きながら接客させていただくのがとても楽しいんですよ。
自分が作るお酒や場の空気によって、目の前のお客様が喜ぶ顔を直に見ることができる。これこそ、僕の思うバーテンダーの醍醐味かもしれません。
バーという空間に秘められた魅力
-深水さんの思う「魅力的なバー」ってどんな空間ですか
深水/緊張感と心地よさ。この相反する2つの要素が、いいバランスで入り交じった空間じゃないでしょうか。
伝統的なオーセンティックバーはやはり独特の緊張感があって、その非日常感が魅力の一つでもあるんです。そして、私たちバーテンダーがサービスや会話を通じてその緊張感を心地よさへと徐々に変えていく。
緊張と緩和。どちらも必要なんです。この2つが交わることによって、背筋がピンと張りながらも、その心地よさに身を任せられるようなバー特有の空気感が醸し出されるのだと思ってます。
-最後に、自分が今まで触れたことのないような「ちょっと上質な世界」と接する際の心構えについて教えていただけますか
深水/やっぱり、多少なりとも「背伸び」することですかね。
僕たちが老舗のお寿司屋さんに行くときなんかもそうですけど、少し緊張しながら背伸びするような感覚でお店へと入っていくんです。でも不思議なもので、2回、3回と通う内にその緊張感が心地良くなってきたりして。
今まで触れたことのない空間に足を踏み入れるのは緊張しますよね。でも、緊張こそ上質なサービスや空間の魅力でもあるので、少しだけ背伸びをしてみましょう。そうすることで、見える世界も変わってくると思います。
-深水さん、今回はありがとうございました
深水/熊本から上京して、いまでは東京の暮らしの方が長くなりましたが、やはり自分の故郷はいつまでも熊本であり人吉球磨です。
地元の良さを心に留めながら、今後もお客様の心を動かすお酒やサービスを提供していきますので、またお店にも遊びにいらしてください。
また次の機会にコラボレーション出来ることを楽しみにしております。