地元・阿蘇のドライフラワーで地域に花を咲かせるプロジェクト「NOKaTs(のおかつ)」。自慢のワークショップに参加して“花の白岳”を作ってみた
企業SNSを担当していると、日々さまざまなメッセージを頂きます。
多くは商品に対する嬉しいご感想だったりするんですが、時には「え、なにこれ!?」と当惑するものも。
その中でも、圧倒的な”このメッセージはなんだ!?オブ・ザ・イヤー2022”に輝いたのがこちらの投稿です。
謎のメッセージ、白 LOVE。いくらなんでも唐突すぎます。
混乱する頭を落ち着けて、読み取れる情報を一旦整理してみました。
普通なら完全にスルーしますが、どうしてもあの花文字が頭から離れなくなり、NOKaTsさんのプロフィールを改めて覗くことに。
最初に目に入ったのが“リボーンフラワー”という聞き慣れないワード。花を使って何かを再生させているのでしょうか。
そして、次に気になったのが高森という地名です。
阿蘇の高森といえば、私たちが本社を構える人吉市から車で2時間以上の熊本でも正反対に位置する町。そう、とても遠いんです。
でも、何時間掛かろうとも高森町へ行ってみることにしました。どうしても気になるし、花だけに面白そうな匂いもしたんです。
ということで、今回はNOKaTs(のおかつ)さんにお邪魔して、あのメッセージとリボーンフラワーの謎を解き明かしに行きます!
NOKaTs(のおかつ)とは
この日、私たちを快く迎えてくれたNOKaTs(のおかつ)のみなさん。
現在メンバーは15名。各々が本業に従事しながら時間をやりくりして参画しています。
まずは、発起人の白石 豊和さんにNOKaTsについて聞いていきます。
--白石さん、NOKaTs(のおかつ)ってどんな団体なんですか?
白石/NOKaTsは、自分たちが生まれ育った高森町の野尻地区を「100年先も愛される地域にしよう」という掛け声から始まったプロジェクトです。
メンバーも農家、企業や役場勤務、ゲストハウス経営、地域おこし協力隊とさまざまで、地区の若手が集まって運営してます。
ちなみに、N(野尻)O(尾下)K(河原)A(アグリカルチャー)T(津留)S(サスティナビリティ)の頭文字でNOKaTs。野尻地区の4つの集落に、農業の力で活気をもたらしたいという想いが出発点でしたね。
白石/そして、そんな想いをどう実現するか考えていた時、ふと閃いたのが地元の生花を使ったドライフラワー作りだったんです。
野尻は昔から観賞用の花き栽培が盛んで、僕自身も花農家なんですよ。
白石/これはNOKaTsのこだわりなんですけど、ドライフラワーには生産や出荷の段階で発生した規格外の花を使ってます。
今まで捨てるしかなかった花にもう一度命を吹き込むことで、生産者が誇りを持ち、地域も元気になるいい循環。花も人も生まれ変われるような、リボーンフラワーというサイクルを作りたかったんです。
あと、若い人を呼び込むには安心して生活できる環境も大切なので、新たな雇用や収入源を創り出すという狙いもありましたね。
白石/それから実際に、ドライフラワー作りを始めてみました。
野尻には専門家なんていないから、みんなで試行錯誤しながら花の乾燥や保管について一つずつ実験する毎日です。なかなか上手くいかなくて、出口が見えないような気持ちになることもありましたよ。
でも、多くの失敗を重ねる中で、少しずつ希望も見えてきたんです。
白石/野尻のドライフラワーは花を摘んですぐに乾燥させるので市販品より色鮮やかに作れるんですよ。あと、高森特有の野草などを使って独自商品を生み出せることも野尻ならではの付加価値なんだとわかってきました。
40品目、200種類以上の花々。これだけ抱負な種類のドライフラワーを提供できるのは、NOKaTsにしかない強みだと思ってます。
それも、全て自分たちの手で取り組んだからこそ気づけたんでしょうね。
白石/その後も専門家に学んだり、お客様の生の声を聞き続けたりして、2022年に念願の商品化を実現できました。
おかげさまで、最近はフォトスタジオの方が直接買いに来てくれたりと少しずつその魅力が口コミでも広まってきてるみたいです。
白石/いまはネット販売がメインですけど、今後も販路を広げて、ゆくゆくはみんなで生み出した「阿蘇ドライフラワー」を地域を代表するブランドに育てていきたいですね。
花がつなぎだす、地域の輪
--そういえば、NOKaTsさんから謎のメッセージが届いたんですけど
白石/ああ、花のメッセージですね(笑)。
あれは、阿蘇ドライフラワーを使ったフラワーアートなんですよ。僕たちが色々なイベントに出展した際、ワークショップに参加していただいた皆さんに思い思いの絵や文字を花で表現してもらってるんです。
白石/野尻の飲み会でも白岳をよく飲ませていただいているので、その愛をドライフラワーに込めて作ってみました。そしたら、それを見たうちのSNS担当が面白がって白岳さんに送っていたという流れでして。
ご覧いただいたとおり未完成なので、ぜひ後ほど完成させてください!
白石/僕は一人でも多くの人に野尻という地域を知ってほしくて、NOKaTsを立ち上げました。
イベントに出張して、ドライフラワー販売やワークショップを始めたのも全てはそのためなんですよ。まずは野尻の花を知ってもらうことで、その先にある地域や人の温かさに触れてもらえたらいいなって。
白石/野尻は小さな地区ですけど、昔からみんなとても仲良くて困っている人がいたら率先して助け合うような素敵な町なんです。
NOKaTsのメンバーも自分の仕事をもちながら、連日夜遅くまで続く会議に嫌な顔をせずに取り組んでくれる人間ばかり。全員が野尻の未来を自分ごととして捉えてくれているのがひしひしと伝わってきます。
献身的に取り組んでくれるNOKaTsメンバーや前向きに見守ってくださる地域の方々には、本当に感謝しかありません。
白石/そんな、いまのNOKaTsの課題は製造から販売までの一貫した流れを作ること、そして阿蘇ドライフラワーをきっかけに多くの関係人口を野尻に呼び込むことです。
そのために、そうした機能を実現できる地域の交流施設を現在立ち上げて始めています。
白石/必要な資金は自分たちでも工面しながら、この活動に賛同いただける方々にクラウドファンディングで寄付も募りました。
白石/この施設が完成すれば、ドライフラワーの製造から保管・販売まで全ての工程をこの施設で行えるようになります。
また、外部から来たお客様に地域の魅力やドライフラワーを体験してもらったり、野尻に住む人たちの憩いの場として活用できたらいいなと。
白石/NOKaTsがつくりたいのは、一つの大きな輪っかなんです。
阿蘇ドライフラワーを起点として雇用や収入が生まれ、変化を見た若い人たちが地域を盛り上げていく。そして、その人たちが作るムーブメントで外から来る人たちがどんどん増えて、その他の産業も盛り上がっていく。
そんな、野尻が100年先も輝き続けるサイクルを先の世代に残したいって思ってます。
白石/とはいえまだ課題も山積みなので、メンバーと議論を重ねながら、ドライフラワーや交流施設を通じて地域に大きな花を咲かせていきたいです。
あ、さっそく白岳さんにもワークショップを体験してもらいましょうか。
ワークショップで「花の白岳」を
教えてくれたのは、花のメッセージを送ってきてくれたTwitter担当の吉良山さんです。
吉良山/よろしくお願いします!必要なのは阿蘇ドライフラワー、ボンド、鉛筆、ハサミ、ボード。これだけです。
吉良山/まずは鉛筆で「白岳」の下書きを書いてみてください。
吉良山/あ、凄くいいですね。
次は下書きの上にボンドを出して、花を貼り付ける前の状態を作ります。
吉良山/そうです、そうです。もっとたっぷりいいですよ。
吉良山/素晴らしい、豪快ですね(笑)。
それではここに小さなドライフラワーを上からふりかけていきましょう!ここもドバッといっちゃっていいです。
吉良山/一旦、こんな風にくっつくので…
吉良山/周りの花を丁寧に落としていくと…
吉良山/素晴らしい「白」が出来ましたね!
仕上げに大きい花をあしらっていきます。
吉良山/いい感じです。ボンドで好きなところにつけてください。
私の方も、できました!
吉良山/これで見事白岳の完成です!
--初体験でしたけど、めっちゃ簡単ですね!
吉良山/ワークショップには小さいお子さんも来られるので、誰でもできるように出来るだけシンプルにしました。記念品やプレゼントにも、とても喜ばれますよ。
吉良山/これからも色んなイベントに出張しますので、ぜひ皆さんで遊びに来て作ってみてくださいね。
大切なことは、一つずつ
--白石さん、ありがとうございました!
白石/こちらこそ、遠くまでありがとうございました。
いろんな取り組みについて話しましたけど、いまもみんなで壁にぶち当たりがら一歩一歩進んでいる途中です。まだまだ大変なことも多いですね
でも、僕はそんなゆっくりとした歩みでいいとも思ってるんです。
白石/やっぱり、人も花も一気には育たないんですよ。
だからこそ、一つひとつの取り組みや子供たちの成長を丁寧に見守っていくことで、野尻みんなが当事者として地域を盛り上げていけるような空気をゆっくりと着実に作っていきたいですね。
白石/これから交流施設も立ち上がって、野尻は更に盛り上がっていきます。
僕たちも、また新しい阿蘇ドライフラワーや野尻でしか味わうことが出来ない楽しい体験を作ってお待ちしていますので、また遊びに来てください!