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プロイラストレーター・小池アミイゴが情熱的な語り口で絵の楽しさを説き、白岳しろが甘美な呑み口で参加者を酔わす【酔彩画イベント@東京・丸の内】を徹底的にレポートしてみたい

「絵のテーマは自由!心の声に耳を傾けてください!」

高いテンションでイベント参加者を大いに盛り上げ、画用紙に向かって軽快に線を重ねていくのは、プロイラストレーター小池アミイゴさん。

イラストレーターで構成される東京イラストレーターズ・ソサエティ(TIS)という団体の理事長を務めながら、自らも様々なジャンルの仕事を通じて多彩な作品を世に送り出す生粋の表現者です。

また、2022年4月には作画とストーリーを手掛けた絵本作品「はるのひ」第27回日本絵本賞受賞するなど、イラストレーションにとどまらず日々その活躍の場を大きく広げ続けています。

小池アミイゴさんと第27回日本絵本賞を受賞した「はるのひ」

そんな小池アミイゴさんにインストラクターを務めていただいたのが「5/14酔彩画DAY in丸の内ハウス・ライブラリースペース」

放送作家・小山薫堂さんが発案したお酒を飲みながら楽しく絵を描く「酔彩画(すいさいが)」というコンセプトを一般のお客様に体験いただくためのイベントで、白岳しろを飲みながらそのボトルに絵を描いていきます。

今回は参加者の皆さんが楽しそうに酔彩画を描く当日の様子をお伝えしながら、小池アミイゴさんがイベントを通じて発信し続けた「絵を描くことの楽しさ」について紐解いていければと思っています。

シャイな大人と絵とお酒

小山薫堂さんと小池アミイゴさん

イベントは、酔彩画の発案者・小山薫堂さんとこの日インストラクターを務める小池アミイゴさんのトークセッションからスタート。

“アミイゴ”という個性的な名前の由来からイラストレーター業界を盛り上げるアイデアまでトークテーマは様々でしたが、個人的には「なぜ大人は絵を描かなくなるのか」というアミイゴさんのお話が印象的でした。

アミイゴ/大人ってね、恥を掻きたくないから、絵を描きたくないんですよ。子供を見てごらんなさいよ、上手くても下手でもお構いなしに描くでしょ?大人だけですよ、描く前から上手だの下手だの気にしてるのは。

だから、僕のイベントでは上手(じょうず)っていうフレーズは一切禁止。絵は楽しんで描かなくちゃ。そういう意味で、お酒飲みながらハイになって絵を描くって、大人にはちょうどいいかもしれないね。

まあ、僕みたいにしろを8杯も飲んだらさすがに描けなくなるけど(笑)。

この日用意された画材

たしかに、大人の方にお絵かきしろに絵を描いてみてくださいってお願いすると、“いいよ、下手だから”とか“絵はあんまり得意じゃなくて”という反応が返ってくることがとても多いんです。

自分もなんですけど、絵を描く時って何か得体の知れない者にジャッジされているような感覚がどこかにあるんですよね。

でも話を聞くうちに、もしかしたらこの酔彩画イベントでそんな大人たちの絵に対する抵抗感を無くしていけるんじゃないかというちょっとした期待感が自分の中に生まれて、少しワクワクしてきました。

高橋酒造株式会社/高橋  宏枝

そんな小さな胸の高鳴りをよそに、イベントは開会の乾杯へ。

どんな結末を迎えるのか誰にも予想がつかない、一般のお客様を交えた酔彩画イベントの火蓋がこの乾杯をもって切られました。

描きたいものを、描いていく

アミイゴさんワークショップの特徴は、いきなり絵を描き始めないこと。

まずは参加者たちに自分と向き合ってもらい、自らの描きたいものをしっかりと見つめてもらうところからスタートします。

餃子の絵を描くアミイゴさん

アミイゴ/何でもいいすよ!今頭の中にある自分の好きなものを、線にしてみてみましょう。どうしても思い浮かばなかったら、しろに合わせたら美味しそうな食べものでも全然構わないんだから。

美味しい食べもの…。美味しい食べもの…。はい、これ餃子ね。これなんて全然難しい線を引いてるわけじゃないんだけど、この線が変だなとかおかしいなって思う人っています…?いないっすよね。

絵ってこう描かなきゃいけないみたいなことは全然なくて、本当に自分の中に自然と浮かんでくるものを描けば楽しいんですよ。

アミイゴさんは続けます。

アミイゴ/上手って言葉は、絵を描く上では諸悪の根源だから今日は一切禁止ね。小池アミイゴっていうおじさんに気に入られようなんてあざとい作品は面白くもなんともないんだから!自分が描きたい線を描いてください。

あと、ここまでで良いと思った絵にはそこから付け足さない!それは自分の心がOKを出してるってことなんだから、その絵はそこが完成なんです。

描く人の精神性にとことん寄り添うのが、アミイゴスタイル
緊張気味だった参加者たちもラテン系のアミイゴ節につい笑いを誘われて、手元の白岳しろにも少しずつ手が伸び始めます。

アミイゴさんが3回のワークショップを通じて終始一貫伝え続けたのは、自分の好きなものを好きなように描こうということ。

こうしてアミイゴさんとしろに創作意欲を刺激された参加者たちは、自分の好きなものやその時の気持ちを酔彩画に乗せて表現していきます。

大好きな猫をモチーフに描く人

その時、たまたま浮かんだカッパを描き込んでいく人

熊本名物・からし蓮根にも描き手のいい味が…

アミイゴさんも忙しく歩き回り、しきりに参加者へと声を掛け続けます。

「いやあ、面白いアイデアだねえ」
「とっても、素敵な線を引くなあ」
「この構図なんて、プロでもなかなか思いつかないよ」

上手という言葉は一切使わず、描き手の衝動に寄り添うアミイゴさん。その声を受けて、参加者たちの筆はさらに勢いを増していきました。

また、描きはじめはどうしても他の参加者や作品が気になる様子でしたが、お酒と筆が進むごとにそうした雑念も消え始め、どの参加者たちもただただ目の前のボトルに向き合い始めます。

そこに作品を評価する他者の存在はなく、あるのは自分だけの世界

アミイゴさんがトークセッションで話していた「絵は楽しんで描く」という空気が自然と会場中に広がって、絵とお酒の楽しさに陶酔する酔彩画のコンセプトが参加者たちの手によって形づくられた瞬間でした。

この日完成した酔彩画ボトルは、総勢31本
どれもが描き手の想いがそのまま伝わってくる作品ばかりです。

完成した酔彩画ボトルの一部

イベント途中からは上手とか下手なんてことを気にする人は一切いなくなって、自分たちが描きたいものをありのまま描いていくという絵を描く原点のような光景に立ち会えることが出来た素晴らしい時間となりました。

ご参加いただいたみなさま、本当にありがとうございました。

楽しい時間のかたわらに

最後は、イベントで個人的に感じたところを2つほど書いていきます。

まず1つ目は、楽しんでいる人の横顔はとても美しかったということです。

今回イベントの様子をカメラに収め続けていましたが、周りの声も聞こえないくらい熱中している人の表情って本当にカッコいいんですよね。アミイゴさんが声を枯らして叫び続けた楽しむという姿勢は、もしかしたらその人が最も魅力的に映る姿勢なのかもしれません。

そしてもう1つは、しろってやっぱり“楽しいやつ”だなってことです。

長い自粛期間を経ての久々のリアルイベントでしたが、絵を描く合間に白岳しろを飲む人たちがもうたまらなく良い顔しているんですよね。楽しむという行為の前提にある、自由で開放的で楽しければいいじゃんという空気を作ってくれた白岳しろってやっぱり楽しくていいやつだと思いました。

イベントも終了間際になって、ちょっといい具合に酔いが回ってきたアミイゴさんが、わたしたちに向かって高らかに叫びます。

アミイゴ/「白岳しろって、上手なお酒ですね~」って言われて嬉しいすか?全然嬉しくないでしょそんなもん!

本当にそうですね、アミイゴさん。
これからも白岳しろなりの「楽しむ」を模索していきたいと思います。

上手いお酒ではなく、美味いといわれるお酒を造り続けるために。