九州で最も人口が少ない村に生まれた地域づくり企業 「日添(ひぞえ)」。地元 五木村で土屋 望生が添え続ける“しあわせ”への構えとは
いま、あなたはしあわせですか?
真っ直ぐに聞かれると、なぜだか少しドキッとするこんな質問。
こうした問いに、日々やさしく向き合う小さな企業が、九州の内陸部で最も人口が少ない熊本県南部の五木(いつき)村にあります。
株式会社 日添(ひぞえ)ー
2018年に創業し、五木村に住む1000人の村びとに、1000通りのしあわせを生み出したいと取り組み続けてきた地域づくり企業です。
日添という社名は、五木村のとある集落からとったもの。
その地では日が当たる場所を日当(ひあて)、日があまり当たらない陰の場所を日添(ひぞえ)と呼ぶことから、自分たちは陰となって暖かな日を添えるように地域を支えたいという想いをその名に込めたといいます。
そして今回お話を伺うのが、株式会社 日添の土屋 望生さんです。
五木村で生まれ育ち、人吉・熊本・東京での生活を経て、創業メンバーと共に故郷で日添を立ち上げた土屋さん。
「1000人のしあわせが、はじまり。」という日添の理念やその事業を中心に、土屋さんが大切にする地域との関わり方について聞いていきます。
日添が仕掛ける“4つの事業”
--土屋さん、日添って一体なにをする会社なんですか?
土屋/五木村の魅力を引き出すためなら、何にでも取り組みますよ。
五木にはつい人に自慢したくなる魅力的な人たちや物があふれているので、私たちの役割はその良さをPRしたり、アイデアを実現するお手伝い。まさに日を添える活動です。
具体的には、活かす・つくる・つなぐ・食べるという4つの事業を通じて、村と外の世界をつなげようとしています。
土屋/例えば、活かす事業。
地域に良い物があったとしても、それが市場に出てるとは限りませんよね。そんな原石みたいな素材や技術を、人が触れられる商品やサービスへと仕立てていきます。
土屋/単なる代理販売ではありません。
どうすればその魅力が外の世界に伝わるのかを、生産者や村の人たちと向き合って一緒にそのプロセスを創っていくのが活かす事業。
主役はあくまで五木の良いものと、その周りにいる人たちですから。
土屋/次に、つくる事業。
いいものだからこそ、その良さがひと目で伝わるシンボルやデザインの力ってやっぱり必要なんですよ。そのために、私たちはブランドロゴやパッケージづくりも多く手掛けてきました。
土屋/大好きな人たちが毎日一生懸命つくっているものの良さを、みんなにも直感的に感じてほしいんです。
ちなみに、この五木とうふ店の土屋さんご夫妻は村にたくさんいる私の推しの中でも特に大好きなお二人。お豆腐はもちろん、この二人もアピールしたいなって(笑)。
土屋/そして、つなぐ事業。
普通は人材領域って表現するのかもしれません。だけど、五木のような小さな村で求められる働き方はもうちょっと柔らかです。
土屋/村を担う働き手から、プロジェクトオーナー、そして経営者まで。その時々で、求められる人材やスキルも大きく変わります。
移住が必要なケースもあれば、副業で専門知識を提供してほしい場合も。
こんな風に、五木村のニーズと外部の人材をマッチングして地域に求められている力を供給するのがつなぐ事業です。
土屋/この図の通り、マッチングの起点はあくまでプロジェクト。だからこそ、お互いのやりがいや納得感がポイントになります。
村に生まれる「来てくれてよかった」と「来てよかった」のあいだに立つこと。それが、このつなぐ事業における一番の目的ですね。
土屋/最後は、ここcafeみなもとで運営する食べる事業です。
ここでは、レストランとして食事を提供したり、村の特産品を販売したりしています。
CAFÉみなもと / カフェみなもと(熊本県五木村)/Instagram
https://www.instagram.com/cafe_minamoto/
土屋/村の人に日添の存在は少し伝わりにくいと思っていたので、その活動を少しでも見えやすくするために古民家を改装してスタートしました。
食べるって、誰にとっても当たり前じゃないですか。そんな日常の営みを通じて、もっと日添を身近に感じてほしかったんです。
土屋/あと、単純に五木のみんなが集える場所を作れたらいいなって。
美味しいものを食べながら色んな話が出来て、立ち寄った人みんながにこやかな気持ちで帰れる空間にこのcafeが育ってくれたらそれだけで嬉しいです。
土屋/それでも、まだ村の人からは「ハードルが高い」という声も多いので、入店してもらえるよう引き続き工夫していきます(笑)。
1000人のしあわせが、はじまり。
--「1000人のしあわせが、はじまり。」にはどんな意味があるんですか?
土屋/うーん。日添がこの村にある意味というか、目的です。
日添の原点には、村びと一人ひとりに一つずつ以上の「五木村にいるポジティブな理由」をもってもらいたいという想いがありました。だから創業した時にも、この言葉をまっさきに掲げたんです。
だけど、幸せって人それぞれですよね。
土屋/お金を稼ぎたい人、子供にしっかりとした教育を与えたい人、私みたいに村のみんなが笑っていれば幸せっていう人もいます。
そんな十人十色のしあわせをつくるためには、ベースとなる雇用や収入源といった経済の流れを整えることが大事だと感じました。
しっかりと仕事をして、その対価を受け取る。シンプルですけど、自分たちの仕事でお金を稼ぐからこそ、誇りを持ちながら無理なく地域が成長していけるんですよ。
土屋/当たり前に聞こえますよね。でも、こんなサイクルがしっかりと回っている自治体って意外と少なかったりします。
みんな一生懸命で頑張る人たちだからこそ、“町おこし”や“地域創生”って聞くとボランティア精神を発揮して無償で頑張ってしまう。でも、やっぱり無理って続かなくて、どこかで限界が来るんです。
東京で地域づくりの事業に従事していた時も、そんな打ち上げ花火のようなプロジェクトをいくつも目の当たりにしてきました。
土屋/だからこそ、日添は五木村の歩幅で歩いて行きたいんです。無理に巻き込むのではなく、取り組みを知った人が面白そうとかやってみたいって自然と集まってくれる。こんな、流れができたら最高ですね。
さっきお話した、4つの事業にしてもそう。
例えば、特産品も五木では大量につくること自体難しいんですよ。だから大手の量販店に卸そうとすると、どうしても無理がきてしまう。だけど、観光客だけに頼ると今度は事業として成り立たなくなります。
そんな中で大切なのが、五木村を自然と愛してくれるファンの存在です。
土屋/プロジェクトを通じて五木村に来てくれた外部の人たちが、村を好きになって帰っていく。そうすると、その後色んな人を連れて来てくれたり、好きだからという理由で村のいいところを発信してくれます。
なんか、いいですよね。価格とか損得だけじゃなくて、お互いが好きでつながっていたいって思える関係って。
五木ってなかなか行きづらい場所にあるんですけど、みんなが仕事や役割を持って来てくれるからこそ、こんな温かな間柄が生まれていると思います。日添は、変わらずそんな関係づくりの発信地になっていきたいです。
ただ、楽しく生きていく
--土屋さんはなんでそんなに村のために頑張れるんですか
土屋/村のためというより、村に住むひとが好きだからかな。ここだけの話、私って他の人より幸せを感じやすい体質みたいで。
知り合いのおじちゃんが店の前を通るたびに手を振ってくれたり、ごみ収集車のお兄ちゃんがいつも素敵な笑顔で挨拶をしてくれる。こんな何気ないことで、たまらなく幸せになれる人間なんです。
だから、もっともっと村の人たちの笑顔を見たい。これが五木に戻ってきたきっかけだし、日添を楽しく続けられている理由なんでしょうね。
土屋/日添のプロジェクトは、いつだって身近な人たちとの雑談からスタートします。
「最近、どう?」とか「あれどうなったと?」みたいに、村の人が話してくれる小さな願望や悩みをかたちにしていくことで、ゆっくりと一人ひとりの笑顔を生み出していくのが私たちの得意とするスタイルです。
土屋/時間はかかるかもしれないけど、地道に取り組み続けているうちに、いつか1000人のしあわせに辿り着けたらいいですよね。
私としてはその過程で五木に関わってくれた人が村に住んでくれたり、若い人たちが望んで村に帰ってこようとしてくれる変化を焦ることなくじっくりと楽しみ続けたいんです。
ゆっくりと、一歩ずつ。これが五木村の歩幅ですから。
土屋/というわけで、しろのボトルには「楽しく生きる」って書きました。
これは私の幸せの感じ方なのかもしれませんけど、自分の好きな人たちが笑って楽しくそこにいてくれるだけで十分に嬉しいから。
1000人のしあわせが、はじまり。
そのはじめの一人として、まずは自分が楽しく生きて、その楽しさを村のみんなにも届けていきたいですね。
--土屋さん、ありがとうございました!
土屋/こちらこそ、ありがとうございました。
ちなみに、いま五木村では複数の事業所で並行して働ける人を絶賛募集中。一緒に村の未来を創っていきたい方はぜひご応募ください!
また、五木村に遊びに来たときにはぜひcafeにも寄ってくださいね。
楽しみにお待ちしています。