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熊本が誇る伝説のホットドッグ「四つ葉」。世代を超えて愛された思い出の味を今に伝える店主の絶品ホットドッグをしろと頬張ってきた

「空港に行く途中、古か車でホットドッグば売っとらすでしょ!?」

「あー、あれね!」

熊本県民であれば、一度は経験したことのあるこんなやりとり。

話題の主は、熊本市内から空港へと続く第二空港線で45年ものあいだ愛されてきた伝説のホットドッグ「四つ葉」です。

名物のおっちゃんが一つ一つ焼き上げる、具がたっぷり入ったカリッカリのホットドッグはまさに唯一無二の食感…。

その味を求めて親子三代で通う常連もいるほどの名店で、空き地に佇む年季の入った販売車も地元では見慣れた光景です。

そんな熊本のソウルフードとして親しまれてきた四つ葉ですが、2021年3月に惜しまれながらその最後を迎えました。

「もう、四つ葉のホットドッグは食べられない…」

往年のファンたちから聞こえてきたそんな落胆の声に立ち上がったのが、キッチンカー九州.Lab代表の村上  舞さんでした。

PROFILE 村上  舞(むらかみ  まい)
キッチンカー九州.Lab代表/九州にキッチンカー文化を創るべく、車体製造からコンサルティングまで日々奔走する女性起業家

四つ葉と同じ敷地にキッチンカーを出店し、お客さんの四つ葉愛やオーナーのお店に対する想いを間近で見てきた村上さん。

移動販売の難しさや歴史ある店舗を承継する重責を知った上で継ぎたいと申し入れ、2021年10月に新生・四つ葉をオープンしました。

今回は村上さんに四つ葉を引き継いだ想いを伺い、直伝のホットドックを振る舞っていただきます。

建築と料理、そしてキッチンカー

--村上さんはずっとキッチンカーのお仕事をされてきたんですか

村上/いえ、もともとは高校を卒業して設計事務所で働いていました。

ただ、父の病気もあって、家計を支えるために昼は設計の仕事をしながら夜はアルバイトをしていたんです。そんな中、ある飲食店で働いたことが食の仕事に興味を持ったきっかけでしたね。

そこは料理の美味しさに加えて、店主の心の通ったやりとりが人気のお店で、自分もいつかこんなお客さんと近い距離感で料理を提供できたらと思うようになりました。

今でも接客に立つ村上さん

村上/そこからダブルワークを10年以上続けて、30歳の時に「新しいことに挑戦したい」と奮起して入ったのが大手の料理教室でした。料理を教えるつもりが、配属はまさかの営業だったんですけどね(笑)。

でも、この配属が大当たりだったんです。

厳しい成果主義も合っていたし、同期にも恵まれました。8年間で管理職も経験して、身につけた営業力や事業運営のスキルは今の仕事にも大いに役立ってます。

それから飲食店に6年間務めて、そのお店が閉店したのをきっかけにチャレンジしたのがキッチンカーでした。

村上/料理には自信があったので休日にサンドイッチでも売ろうなんて考えてたんですけど、移動販売はそんなに甘くありませんでしたね(笑)。結局途中で諦めて、キッチンカーは知り合いに譲りました。

それを期に車体製作に力を入れていくんですけど、コロナ禍のキッチンカーブームで一気に製作台数が増えて、それに伴う開業運営のご相談が舞い込むようになったんです。

村上/キッチンカーは女性オーナーが多いので、私たちが目指す「かわいいデザインと機能性の両立」というコンセプトや私が女性だったことも良かったのかもしれません。

手放した途端、次の何かが飛び込んでくる

私の人生における「あるある」です(笑)。

ホットドック四つ葉との出会い

--四つ葉さんとは、いつごろ知り合ったんですか

村上/私たちが運営するカレー専門店のキッチンカーをどこに出店するか悩んでいた時です。「いい場所があります!」ってスタッフが提案してくれたのが、あの四つ葉が営業する空き地だったんですよ。

村上/ただ、あの場所といえば四つ葉じゃないですか。

「さすがに難しいだろうな…」って思いながらおっちゃん(宮原さん)に相談してみたら、意外にもすんなりとOKをいただけて。そこから、同じ敷地で車を並べての営業が始まりました。

実際に近くで働いてみると、いろんなことが見えてきましたね。

気難しそうに見えるおっちゃんが実はフレンドリーで、特に子供にはとても優しいこと。お客さんはおっちゃんと話したくて四つ葉に来ていること。そして、おっちゃんがどれだけお客さんを愛してるかということも。

村上/おっちゃんの隣でもっと学びたかったんですけど、四つ葉との別れは意外に早くやって来ました。

同じ場所で営業するようになって4ヶ月後、車体の老朽化保健所の許可の問題で2021年3月をもって四つ葉が閉店することになったんですよ。

村上/閉店が決まってからは昔からの常連さんたちがひっきりなしに訪れて、四つ葉との最後の時間を噛み締めてらっしゃいました。

あと、継がせて欲しいという問い合わせも30件以上あったらしいです。でも「覚悟のないやつには絶対やらせん」がおっちゃんの口癖でしたからね。後継者になる人もついに現れませんでした。

そんな状況を見ているうちに四つ葉がこのまま無くなるのがどうしても我慢できなくなって、ダメ元で「私に継がせて欲しい」とお願いしたんです。

村上さんと宮原さん(おっちゃん)

村上/「一回会おうか」といっていただいて、それから何度かお会いするたびに“四つ葉がある風景を残したい”という私なりの覚悟を伝え続けました。

初めは怪訝そうな顔をされてましたが、普段の仕事ぶりを見て下さったんでしょうね。最後は四つ葉を継ぐことを認めてくれました

新生・四つ葉のスタート

--継ぐにあたって、何から始めたんですか

村上/まず四つ葉の味を完全に再現するために、おっちゃんの指導を受けながらホットドックを作り続けました。

分解するとわかるんですけど、四つ葉のホットドッグって具とマスタードのバランスが絶妙で、一本一本の分量に狂いが無いんです。この正確さには、正直驚きました。

一方で、四つ葉のレシピは全ておっちゃんの目分量なんですよ(笑)。店を出すには具材の大きさからマスタードの塗り方まで完全にマスターする必要があったので、その感覚を体に染み込ませるのは苦労しましたね。

村上/特に味の要でもあるカリッとしたパンの焼き加減は厳しく指導されました。焼きが甘いと「こら焼けとらん」って、容赦なくやり直しでしたから。

そんな半年間の修行を経て、なんとか合格をいただき、2021年10月に新生・四つ葉をオープンしました。往年の日産チェリーは古くて使用出来なくなってたので、新車でのスタートです。

オープン当日は復活を喜ぶファンの方や取材もいらっしゃいましたけど、記念すべき一人目のお客さんはもちろんおっちゃんでした。

村上/一口食べた瞬間、「焼きが足りん」っていってましたけどね(笑)。どこか嬉しそうでした。私もこの日四つ葉のバトンを受け継ぐことが出来て、本当に嬉しかったです。

おかげさまで、オープンしてからは各種イベント定期出店で四つ葉の味を楽しんでいただいています。

クリスマスマーケット@サクラマチクマモト

村上/昔ながらの味が忘れられないお客様から辛口のコメントをいただくこともありますが、「初めて食べました」という嬉しい声も沢山いただくので、これからも色々な方に四つ葉の味を提供していきたいです。

おっちゃんがそうしてきたように、私も私なりのやりかたで新しい「思い出の味」を積み重ねていけたらいいですよね。

伝説のホットドッグを作ってもらう

さあ、百聞は「一食」に如かず!

いよいよ村上さんに、四つ葉のホットドックを作っていただきます。

まずは、パンに切り込みをいれて

次に、四つ葉の味を決める秘伝のマスタードをしっかりコーティング。

具材を丁寧に一つずつ盛り付けていくと…

焼く前はこんな感じのビジュアルに

上からケチャップを塗って

いざ、温まったオーブンへ!

待つこと5分

ついに、焼き上がりました!

焼きたてを名物の袋に入れたら…

四つ葉のホットドッグ完成でございます!

袋越しでも、熱々なのが伝わってきます!

ああ、早く食べたい…。

最後は、村上さんに今後の抱負をしろのラベルに書いていただきました。

村上/四つ葉の袋にもあるように「貴方に幸せ」って書きました。

私はキッチンカーがプロスポーツ選手のような子供が目指す夢の職業になって欲しいって思ってるんです。そのために単なるブームではなく、一つの文化へと成長させていきたいんです。

村上/そして、その出発点となるのは、まず目の前のお客さんに幸せになってもらうことからですよね。

これからも焼きたてのホットドッグで、変わらず一つひとつの幸せを届けていきますよ。

村上/ホットドッグは出来立てが最高なので、熱いうちに食べてください!

いざ、実食!

熱々が美味しいのは、米焼酎も同じ。

というわけで、今回はしろのお湯割りと合わせます。

袋からホットドッグを撮り出すと…

「四つ葉のホットドッグwithしろ」の完成!

見てください、この迫力とパンの焼け目

それでは、いただきまーす!

くぁぁぁぁ!

口にした瞬間、まず脳天を突き抜けるのがサクッという小気味いい音…

そして…

直後に爽やかなマスタードの辛味が全身に響き渡ります!これはツーンときますねぇ!

具材が豊富で食感が噛むたびに変わるので、食べ続けても飽きがこない。

音、辛味、食感。

その全てが口の中にとどまってくれているうちにしろのお湯割りを一口…

ふひー!

合うねえ、こりゃ合うよ!

マスタードの辛さとケチャップの酸味を、しろが優しく包み込みます。

ここから黙々と食べ進めて…

ものの5分で

完食

ちなみに1本では足りず、この後2本目を買いに行きました。

四つ葉さん、ごちそうさまでした!

今回は熊本県民の思い出の味・四つ葉のホットドッグを紹介しました。

販売場所や最新情報は公式Instagramで確認できますので、ぜひ一度食べに行ってみてくださいね。

きっと、昔ながらの温かい会話と焼き立てのホットドッグ「貴方に幸福」をもたらしてくれるはずですから。

それでは、ご来店お待ちしております。