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これであなたも“焼酎通”!?お酒について勉強したいと思いつつも難しい言葉が出てきた瞬間にフリーズしてきた人に向けて、お酒の専門用語をわかりやすく解説してみる

何事にも、「つまづきやすいポイント」というものがありますよね。

算数でいえば分数の割り算、ギターでいえばFコード、ゴルフでいえばバンカーショット。どんなジャンルにも、前向きな初学者たちを無惨に跳ね返す高い壁のような項目が存在するものです。

そんな中、「お酒について詳しくなりたい!」という方にとってハードルが高くなりがちなお酒の造りに関する4つのワードがこちらになります。

お酒を勉強する上で難しさを感じることが多いワード4選
①麹(こうじ) ②酵母(こうぼ) ③発酵(はっこう)   ④もろみ

今回は本格米焼酎の製造工程をなぞりながら、難しく感じる4つの専門用語についてシンプルにお伝えしていきます。この記事を通じて、少しでもお酒造りを身近に感じていただければ嬉しいです。

はじめにお米ありき

米を洗って、米を蒸す

さあ、本格米焼酎造りはその名の通り「お米」からスタート。
この段階では、怖い専門用語たちは出てまいりませんのでご安心下さい!

画像を見るとわかりますが、米焼酎に使用されるお米は食用米と比べて少し形が異なります。米焼酎造り最初の工程は、精米したお米を洗う洗米(せんまい)と洗ったお米に水分を吸水させる浸漬(しんせき)という作業です。

 吸水作業の様子

洗米・浸漬はこの後のお米の蒸しあがりにも影響してくるので、お米の状態によって水分量や時間などを適切に管理しながら作業を行っていきます。

さて、しっかりとお米に水分を含ませたら次は蒸米(むしまい)という工程。お米は蒸米機へと運ばれていきます。

ここでのポイントは、お米を「炊く」のではなく「蒸す」ということ。

蒸すことによって、お米の表面は硬く内側は柔らかい「外硬内軟(がいこうないなん)」という理想の状態を目指します。

洗米されたお米は蒸されていく

難しい話は避けますが、この後専門用語たちが出てくる工程に向けて、この外硬内軟(がいこうないなん)が非常に重要なんですね。

外側を硬くすることで造りの途中お米が溶けるのを防ぎ、内部を柔らかく保つことで麹菌が中まで生えやすい状態にするという目的があります

いろいろ書きましたが、このお米パートでは
・お米は炊くのではなく「蒸す」
・ベストコンディションは「外硬内軟」
を覚えていただければと思います。

専門用語のお時間です

麹のトス、酵母のアタック

いよいよ、今回の核心である専門用語のお時間がやってまいりました。

みなさま、準備はいいですか?

それではまず、わかりにくい専門用語①「麹(こうじ)」と②「酵母(こうぼ)」を見ていきましょう。麹はカビ、酵母は微生物の一種です。この2つとお米が信じられないほど協力して米焼酎は造られていきます。

突然ですが、下の写真をご覧ください。

皆様が親しい友人に食事に招かれて「美味しいお米だから食べてみて!」と下のお米を食卓に出されたら、どう感じるでしょうか?

米俵がデンプン、米粒がブドウ糖のイメージ

「いや、炊いてへんのかーい!」とか「俵のままでどう食えと…」というのが、おそらく多くの人にとっての感想のはずですよね。

今、みなさんが抱いた感想はそのまま酵母の気持ちを代弁してます。

酵母はお米に含まれるブドウ糖を食べてアルコールを作ります。ただ、ブドウ糖は米俵みたいにデンプンとしてガッチリ連結している状態なんです。なので、酵母はこのままではブドウ糖を食べることが出来ません。酵母としても「こんなガチガチじゃ食えねえよ…」というのが率直な気持ちでしょう。

さて、この米俵のような状態のデンプンをハサミでバラバラにするように切り裂いて、ブドウ糖に変えてくれる粋な微生物がいます。

もう、おわかりですね?そう、です。

出麴(でこうじ/出来上がった麹を麹室から出した状態)

もちろん、麹はハサミは持っていません。

代わりに酵素(こうそ)という物質でデンプンをブドウ糖に分解して、お膳立てしてくれるんです。この麹の働きを糖化(とうか)といいます。

下の写真は、蒸米に種麹を撒いてをつくる「製麹(せいきく)」という作業です。ここで上手いこと麹菌が増えないと、次に酵母が食べることになる必要な量のブドウ糖も発生しません。

だから、麹に機嫌よく働いて糖化を進めてもらうために、この麹室は麹が増えやすい温度と湿度に徹底管理されています。麹は生き物ですから。

麹がつくられる麹室

お酒造りにおける麹と酵母の関係は、バレーボールのプレーによく似ていますね。麹がいい感じで「糖化」というブドウ糖のトスを上げないと、酵母もアルコールを発生させる「発酵」というアタックが出来ないんです。

こうした美しい連携プレーによって、お米がお酒へと変化していきます。

この辺りで麹と酵母の関係は一旦終了です。次は発酵ともろみに進みます。

人類の歴史と知恵の結晶「発酵」

わかりにくい専門用語③は発酵ですが、一言で説明すると「微生物が物質を分解した結果発生した副産物が、人間にとって有益に作用すること」です。ちょっと硬いですかね。

わたしたち人間が食べ物を食べて排泄するように、微生物もエネルギーを接種すると化学反応を起こして色々な副産物を排出します。この副産物が人間にとって有益ならその活動は発酵、有害なら腐敗と呼ばれます。

この基準でいうと、人の役に立つ菌が牛乳を酸っぱくさせたヨーグルト発酵で、人に害を与える菌が酸っぱくさせた腐った牛乳腐敗。 つまり、食べられる微生物の働きは発酵で、食べられなくなる微生物の働きは腐敗です。言葉の違いは、人間の価値観に基づいたものだったんですね!

ただ、人類は誕生以来、地球上に存在するありとあらゆる微生物の活動を観察し続けて、その1つ1つの活動を自分たちの生活をより豊かにする知恵として活用してきました。その叡智の結晶こそが、発酵です。

今夜、白岳しろを飲む時に「ああ、いま人類の叡智飲んでるわ」と思いながら飲むと味わいが少し違うかもしれません。ぜひ、小さな生物たちが生み出した偉大なる副産物に思いを馳せてみて下さいね。

もろみ、そして、仕込み

米焼酎のもろみ

専門用語もクライマックスですが、最後は「もろみ」です。もろみとは麹に酵母と水を投入したもので、結構ドロドロしています。

あまり難しいとわからなくなるので、もろみは「酵母と麹が頑張ってお米をお酒に変えているパート」と覚えていただければこの記事では十分です。さっき勉強したアルコール発酵ですね。麹が生み出したブドウ糖を一生懸命酵母が食べてアルコールを出している工程がもろみ造りです。

このもろみが本格米焼酎造りの肝となる部分となります。

ちなみに、もろみはアルコール発酵によってアルコールと同時に大量の炭酸ガスも一緒に出すので 誤ってモロミの中に落ちたりすると窒息死する危険性があります。もろみタンクを見学する際はくれぐれもご注意を!

人吉本社のもろみタンク

麹に水と酵母を加えて約6日間もろみを発酵させるのが1次仕込み、1次仕込みが終わってから最初に入れたお米(麹)の約2倍の蒸米を加えて15日間発酵させる工程を2次仕込みといいます。

もろみ造りは酵母の働きによって成立するので、温度管理アルコール度数の細かいチェックが常に必要になります。しかもタンクごとにコンディションが違うので単純に何日発酵すればOKというものでもないんです。

そして、完成したもろみを蒸留すると美味しい本格米焼酎の出来上がりです。それこそ、このもろみだけで数回記事は書けちゃうほど奥の深い工程ですが、今回は流れを知ってもらいたいのでこの辺で終わりましょう。

少しでも理解は進みましたか?

今回の記事は「お酒について知りたいと思っているけど、小難しい言葉が出た瞬間にもうダメ」という方向けの記事。個人的には中高生でも理解できる難易度を目指して書いたつもりですが、いかがでしたか。

用語の説明が少し不十分だったり、単純化しすぎた部分もあることは承知しながらも、この記事を見てくれた方が専門用語について少しでも「ああそういうことね」と感じていただけたら本当に嬉しいです。

また、造りについては当社HPにもまとまっておりますので、お時間ある際に復習していただければさらに理解も深まるかと思います。

この記事でお酒造りの基礎的な部分は解説できたので、今後は専門知識はもちろんのこと、白岳としてこだわっている造りやもろみの後の工程「蒸留」についても記事にしていく予定です。

乞うご期待。それではまた来週!