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【とどける、プロたち#1】熊本・福城屋酒店3代目 小場佐 文俊/若き当主が描き出す「未来の酒屋像」とは

日々酒の魅力を語り、飲む人へと届けるプロフェッショナルたちがいる。

今回から始まるのは、酒を造る側ではなく酒を届け続ける仕事人たちの横顔に迫るインタビュー企画「とどける、プロたち」

第1回目は熊本市新町で創業80年以上の歴史を誇る福城屋酒店の3代目当主小場佐  文俊(こばさ  ふみとし)さんに酒を届ける者としての想いを聞いた。

PROFILE 小場佐  文俊(こばさ  ふみとし)
株式会社福城屋 代表取締役社長/県内の飲食店を中心に販売を展開し、最近では店舗での小売や角打ちなど幅広い新規事業をスタートしている。趣味のキャンプはプロ級の腕前で、日々アウトドアに勤しむ。

家業を継いだ契機と「原点回帰」

-小場佐社長は熊本で80年以上続く福城屋酒店の3代目ということですが、子供の頃から家業を継ごうと思っていたんですか?

小場佐/いや、全然思ってなかったです。自分には子供の頃から「人生の半分は日本以外の国で暮らす」という大きな夢があって、実家に就職してからも海外で生活するための準備を少しずつ進めてたんです。

アメリカでの就職先も決まって「いざ、出国!」くらいのタイミングだったかな。初めて親父に話したんですよ、「俺、海外に行くから」って。

賛成してくれると思ってたら、めちゃくちゃ引き止められてね。逆にその場で「俺はお前に店を継いで欲しいと思ってる」と打ち明けられたんです。

それまで面と向かって話すことは少なかったけど、その時初めて親父の本心に触れた気がしましたね。同時に自分に対して強い想いを持ってくれていることにも気づけたので、30代半ばで家業を継ぐ決断をしたんです。

-社長就任後、店舗での小売や角打ちなど新事業にも積極的に取り組んでおられますが、どういった意図でスタートしたんですか?

小場佐/うちは今でこそ飲食店向けというイメージがあるかもしれないけど、自分が子供の頃は小売一杯飲みもやってたんですよ。その当時の活気ある光景が自分にとって妙にいい記憶でね。そういう意味で、新しい取り組みは「原点回帰」といってもいいかもしれないですね。

あと、個人的には酒のプロも多い飲食店を相手に長年商品を納品してきたっていうプライドと自信があった。その鍛え上げた力で「一般のお客様とも本気で勝負したい」っていう想いも日々強くなっていた気がします。

小売は4年程前から始めました。当時は値札すら1枚も無かったけど、まずウイスキーの試飲からスタートすることにしたんです。

こだわりのお酒が取り揃えられたセラー

小場佐/角打ち(店内での飲食)も、偶然の要素が強かった。新型コロナの影響で飲食店からの注文が減っていた時に「飲食店のテイクアウトをここで食べていいので、お酒はここで頼んでね」っていう取り組みを始めて、それが今に繋がってるんですよ。

この日も角打ちでは楽しい飲み会が開かれていた

小場佐/新事業については前もって計画した部分はもちろんあるけど、状況に応じてやるべきことをやったという意識が強いかな。売上はまだ少ないけど、コロナ禍においてはかなり業績を下支えしてくれてますよ。

仕事人として大事にする姿勢

-ここまで様々な取り組みについて伺ってきましたが、小場佐社長が仕事をする上で最も大切にしているのはどんな事ですか?

小場佐/日頃から社員にも口酸っぱく言っている内容ですが、ずばり「受身にならない」ことです。これさえ守れていれば他の要素は無くてもいいくらい。どれだけ失敗してもいいけど、受身になるのはダメですね。

-なるほど、率先して動くということですね

小場佐/うーん…「率先して動く」というのとはニュアンスが違うかなぁ。言葉にすると難しいけど、単に動くか動かないかのアクションの問題じゃなくて「姿勢」の問題なんです。自分を取り巻く状況とどう向き合うのかっていう考え方の部分ですよね。

例えば、飲食店から注文が入ったとしましょう。その時、注文をそのまま受けるだけではなくて「何か別に提案できないか」とか「注文した意図を聞く」みたいに自分が働きかけられることを常に意識するイメージですね。
今まで取り組んできたことは全てこの考え方がベースになってます。

あと、経営においては始めることも大事だけどダメな時は「スパッと辞める」ことも重要だと考えてます。捨てる決断ですね。

お酒以外に食品や雑貨などのラインナップも豊富

-福城屋さんはお酒以外に食品、酒器、雑貨など幅広いアイテムを取り扱われています。どうしてこんなに品揃えが豊富なんですか?

小場佐/最近、若者のお酒離れなんて言われてますよね。何故だろうって考えると、自分たちの若い頃は「お酒=カッコいい」っていうイメージだった。だから早く大人になって酒を飲んでみたかったもんですよ。でも今の若い人と話していても、お酒をカッコいいと思っている人はなかなかいない

だから酒に関わるものとしては「お酒に憧れるようなシーン作り」が大事かなって思ってます。そのためにワインやウイスキーでもヴィンテージ商品を取り揃えたり、家にあるだけでオシャレに見えるアイテムを意識して取り揃えるようにしてるんです。

店内インテリアにもこだわりが溢れる

小場佐/もう1つは、お酒だけを売るんじゃなくて「お酒のある豊かな生活」を提供するということを意識していますね。お酒を中心にその人の暮らしが良いものになってくれたらそれは嬉しいですよ。

福城屋酒店にとっての「白岳」

-福城屋さんはヴィンテージ商品など個性的なラインナップが売りだと思いますが、その中で「白岳」はどんな位置づけですか?

小場佐/一言でいうと「安心」でしょうね。やっぱり今でも熊本のお酒といえば白岳っていうイメージがお客様にあるんです。飲食店様の中には「白岳はあえて提供しない」っていうお店も少なくないんですけど、やっぱりお客様が求めるもんで結局は入荷しちゃうってパターンも多いんですよ(笑)。

-そういう声を聞くと嬉しいですね!逆に白岳をはじめとする酒造メーカーに求めるものはありますか?

小場佐/難しいですねえ。うーん、あえて言うなら価格以外で勝負するっていう意気込みというか…プライドの部分かな。福城屋は価格ではなくて品物の良さで勝負しようと思ってるけど、お客様の中には1円単位で価格を気にする方がいらっしゃるのも事実です。

小場佐/だからこそ、メーカーには自分たちの造っているお酒に自信を持って出荷して貰いたい。そうすれば価格だけでなく、お酒の価値でお客様に喜んでもらえると思います。

福城屋酒店の未来にむけて

-このインタビューでは最後に白岳しろボトルに未来へ向けたメッセージを書いていただくのですが…

小場佐/えーと、この白岳しろボトルに福城屋の未来について書けばいいんですか?まあ、とはいっても書くことは1つですけどね。

小場佐/「受身にならない」。これこそどんなに時代が変わっても、福城屋として絶対に変えることが無い大事な考え方です。これだけで充分。逆に、この考え方にはこれからもひたすらこだわりたいですね。

-本日はインタビューへのご対応ありがとうございました!

小場佐/こちらこそありがとうございました。改めてインタビューを受けたことで自分が日頃無意識に考えていた事が整理できたような気がします。

今後ともよろしくお願いしますね。

今回ご紹介させていただいたお店について

福城屋酒店
【住 所】
熊本県熊本市中央区新町4丁目3-23
【電 話】096ー352ー7076
【FAX】096ー359ー2462
【営業時間】9:00~20:00
【定休日】日曜日
【駐車場】有
【HP】
https://fukushiroya.com/
【Instagram】
https://www.instagram.com/fukushiroya_kumamoto/?hl=ja
【Facebook】https://www.facebook.com/%E7%A6%8F%E5%9F%8E%E5%B1%8B%E9%85%92%E5%BA%97-677493185606419/
【You Tube】
https://www.youtube.com/channel/UCzv4peqbADgeLNyB6CMXJYw