「白岳しろハイボール缶」誕生の軌跡。2年ぶりにリニューアルした新デザインの全貌、そして本格焼酎の骨格を守り抜くそのこだわりに迫る
蓋を開けた途端にあふれだす、弾ける泡の音と芳しい米の香り。
本格米焼酎をその場で楽しめるRTD(READY TO DRINK)として、2021年5月に発売されたのが「白岳しろハイボール缶」です。
しろ本来の味を忠実に表現していると多くの反響をいただいた本商品。このたび装いを変えて、新デザインへとリニューアルします。
そして、こうした転換期だからこそ改めて発信したいと思ったのが、この商品が誕生した背景や造りに込めたこだわりです。
発売から40年近くお馴染みの瓶で伝統とブランドを守り続けてきた白岳しろが、なぜハイボール缶としてリリースされたのか。
そんな問いに今回答えていただいたのが、白岳しろハイボール缶の企画から販売までを担当する酒類卸の老舗・日本酒類販売株式会社のお二人です。
変わらぬ造り手の想いと目まぐるしく変化する市場の動き。
その二つを絶えず見守り続けてきたパートナー企業が考える、いまハイボール缶を発信する意義とは一体どんなものだったのか。
本格焼酎ハイボールシリーズを立ち上げたN部長と味の設計やデザインリニューアルに携わってきた担当のYさんにその開発にかけた想いや味を決める上で大切にしたという哲学について伺っていきます。
時代の変化、飲み方の変化
--まずは「本格焼酎ハイボール」シリーズが生まれた背景を教えていただけますか?
N部長/本格焼酎ハイボールはお客様との会話から生まれた商品なんです。
当時、私たちが担当する小売業様がハイボール商品の拡大を成長戦略の一つに掲げていました。そうした課題を受けて、ウイスキーが主流だった中で和酒に強みを持つ当社が目をつけたのが本格焼酎です。
九州でも人気が高い芋焼酎のさつま島美人や黒伊佐錦、そして白岳しろの三銘柄でハイボールシリーズを造ることで、お客様のご要望に応えながら新しい形で本格焼酎の魅力を発信できればと考えてましたね。
N部長/そして、缶商品を作ったもう一つの要因が市場の変化でした。
ライフスタイルの変容と共にその場で飲めるRTD商品が急激に伸びて、様々なお酒の炭酸割りが市場に出回り始めていたんですよ。
あとは新型コロナウイルスの流行も大きくて、飲食店でお酒を飲む機会が急激に減って家飲みの需要が増えました。すると、消費者も自然と健康志向でお酒を選ぶようになったんですよね。
こうした時代の要請に合わせて、本格焼酎ハイボールは糖質・プリン体・香料・甘味料の”4つのゼロ”をPRポイントとして開発を進めたんです。
N部長/色々な要素はあったものの、僕個人としてはお店の棚から本格焼酎を無くしたくないという使命感が一番強かった気がします。
長年和酒を扱う仕事をしてきて本格焼酎には人一倍思い入れがあったので、商品発売後に各社の社長様のもとを訪問して商品やブランドにかける想いを伺った上で当社の想いもしっかりと伝えました。
御社の高橋代表からも白岳しろが米焼酎のフラッグシップモデルである意味や商品ごとの蒸留法の違いなどを伺ったことで、その根底にある本格焼酎へのこだわりを直に受け取らせていただいたと思ってます。
N部長/なにより造り手の皆さんと対話を重ねたことで、自分たちが造るべき商品や立ち返る場所を改めて確認することができました。
各社からお預かりしている大切なブランドと丁寧に向き合ってきたからこそ、今も胸を張ってこのお酒を造り続けられているんです。
本格焼酎で勝負する覚悟
--ハイボール缶を開発する上で、どんな所にこだわりましたか?
Yさん/本格焼酎そのもので勝負することですね。
本格焼酎の良さって個性豊かな原料の味をそのまま楽しめるところにあると思うんです。だからこそ、いま流行りの柑橘系フレーバーや甘味などを一切加えずにその持ち味を引き出すことだけに注力しました。
各社がプライドをかけて創り上げたラベルの価値を落としたくない。本格焼酎を届けてきた当社だからこそ、その本流で直球勝負したい。こうした考えがいつのまにかチームに浸透していたような気がします
Yさん/そのこだわりって、実はアルコール度数にも現れているんですよ。
ライトユーザーを意識した4%やストロング系酎ハイと同じ9%といった異なる度数の試作品を何度も飲み比べたんですけど、結局白岳しろの味に最も近いという理由で現在の7%に落ち着いたんです。
ちなみにハイボールの炭酸も製造業者様にガス圧MAXに設定いただいて、本格焼酎のしっかりとした味わいに負けないような強炭酸で造っています。
そこに本格焼酎らしさはあるか。どの工程でも、その一点だけを見つめて開発してきた道のりこそがこの商品最大のこだわりじゃないですかね。
--いま持たれているのは、ハイボール缶の新デザインですよね?
Yさん/はい、こちらがハイボール缶の新しいデザインです。
社内の声を受けて若手のチームを中心にイチから構想を練っていったんですけど、これまで以上にしろハイボール缶の魅力をダイレクトに訴求することが私たちに与えられたテーマでした。
そのために、人気のある他社商品の分析や社内アンケートを繰り返しながら、シズル感のある氷のビジュアルを目立たせたり文字を減らすことで、白岳しろの爽快さを感じられるような表現を目指したんです。
苦労もありましたけど、個人的には今まで焼酎に親しみのなかった方でも手に取りやすいデザインが完成したと思ってます。
Yさん/私はお酒が大好きで当社に入社して、ここ一年ほど和酒の担当をしてきました。
それまではチューハイなどの甘いお酒をよく飲んでいましたが、本格焼酎に触れるようになってからはその素朴な味わいや原料をそのまま感じられるこのお酒の魅力に惹き込まれている自分がいます。
新デザインのハイボール缶を通じて私のように「本格焼酎って美味しい」と感じてくださる人が一人でも増えていただけたら嬉しいですね。
お酒と人。互いを繋ぎあうもの
--疑問だったんですけど、どうして数ある本格焼酎の中で白岳しろをハイボール缶のラインナップに選んでいただいたんですか?
N部長/僕自身が本当に美味しいお酒だと思っていたからでしょうね。
しろとの出会いは、20年以上前に広島に赴任していた時でした。当時はまだ焼酎ブーム真っ只中で、ある居酒屋でキープボトルが大量に並んでるのを見て“しろってこんなに飲まれてるんだ”って衝撃を受けた記憶があります。
その後、御社の福岡支店の方と飲みにいった時に「しろの炭酸割りは格別やけん飲んでみて!」って勧められて完全にその味の魅力にハマりましたね。今では家で飲むお酒の一つとして常備していますから。
しろハイボール缶誕生には、実はこんな人間臭いエピソードがあったんですよ(笑)。
N部長/でも、そういう繋がりこそこの仕事の醍醐味だって思います。
僕たちの仕事はメーカー様と小売店様の間で流通を担う仕事ですけど、そこに誰かの想いが乗っかってくるから面白い仕事が生まれるんですよね。
本格焼酎ハイボールシリーズも常に順風満帆だったわけではありません。店舗での売上が良くない時期もありましたけど、そういう時に立ち返るのが「自分はこの商品で何を成し遂げたかったのか」という原点なんです。
Yさんをはじめとする当社の若手社員にもただ売るためじゃなくて、大義を持って仕事に臨んで欲しいなと期待しています。そうすれば仕事は自然と面白くなるし、僕も早めに後進に道を譲れますから(笑)。
Yさん/プレッシャーです…(笑)。でも、本格焼酎ハイボールをシリーズとしてリリースした意味は常に心がけるようにしています。
単に売れる商品を出すのではなく、様々な本格焼酎をお店の棚に置くことで消費者にとっての豊かな和酒文化を当社主導で発信していくこと。こうした価値を紡いでいくことで、自然と売上にも繋がっていくと思うんです。
これからも私たち卸売業だからこそ発揮できる価値を追い続けながらN部長の期待を超えられるような仕事をしていきたいですし、お客様や社会に対して常にインパクトを与えていけたらいいですよね。
N部長/これまでお話ししてきた通り、本格焼酎ハイボールシリーズは美味しい本格焼酎を造り続けてきた各社と和酒の魅力や文化を全国に発信したい当社の想いを一つの缶に詰め込んだ商品です。
開発でも味には一切妥協を許さなかった自信作ですので、ぜひ店頭で手に取ってみてください。一口飲んでいただけたら、きっとその違いはわかっていただけますから。
Yさん/新しいデザインにも私たちのこだわりが詰まっていますので、注目していただけると嬉しいです。
二人/今後とも、本格焼酎ハイボールをよろしくお願いいたします!