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300年の歴史を誇る熊本の伝統産業“南関そうめん”。若き10代目が紡ぐ最高級そうめんを白岳しろで流し込むと、そこに現れたのは楽園でした

「少しだけ待っててくださいね。もうすぐ終わりますから」

繊細な手つきと一心不乱な顔つき。
その両方で、職人は絹糸のようなそうめんを紡いでいきます。

熊本と福岡の県境に位置する、玉名郡南関町

江戸時代に肥後藩の関所として栄えたこの地の伝統産業南関そうめんです。徳川家や皇室への献上品としても用いられた高級品で、軒先でそうめんを手延べする風景は町の風物詩として古くから親しまれてきました。

南関町にある製麺所の中で今回お邪魔したのが、雪の糸素麺  猿渡製麺所。江戸時代から南関そうめんを作り続ける老舗で、屋号には代表銘柄の「雪の糸」の銘を打っています。

こちら雪の糸素麺  猿渡製麺所の若き10代目が師富  慶太朗(もろどみ  けいたろう)さん。昔から受け継がれてきた製法を守りながら、日々南関そうめんを紡ぐ伝統の担い手です。

PROFILE師富 慶太朗(もろどみ けいたろう)
南関町出身。雪の糸素麺  猿渡製麺所 10代目。2018年に家業を継ぐ決意をし、実の祖母である先代 井形 朝香から薫陶を受ける

師富さんが大切にするのが、南関そうめんの本質ともいえる「手仕事」生産性効率化が叫ばれるこの時代に、少量しか製麺できない昔ながらの作りを心から愛し、そのこだわりを貫き続けています。

今回は師富さんに南関そうめん作りを見学させていただき、その後に白岳しろと合わせながら実食してみました。

手仕事が生む「南関そうめん」の魅力

-いま、どんな作業をされているんてすか

師富/この作業は「手延べ」ですね。

僕たちは“割り”と呼んでますが、両側の竹に巻き付けたそうめんを2本の棒で延ばしていきます。今でこそスムーズに出来るようになりましたけど、力加減が難しくて最初はよくそうめんが切れてました。

師富/これが伸ばす前のそうめんです。何本も巻き付いているように見えるでしょう。でも、実はこれ1本の麺なんですよ。生地をヨリながら細くして、手作業で巻きつけます。

師富/南関そうめんは2日がかりで作っていくんです。生地を合わせて、手ごねして、一晩寝かせるのが1日目。今日は2日目なので、午前中に巻きつけたそうめんを午後から一斉に延ばしてます。

そして、この全ての工程において一切機械を使わずに手仕事だけで作るのが、南関そうめん最大の特徴なんです。

師富/全国でも、手延べで作られている産地は凄く少ないと思います。そういう意味でも、全ての工程が手仕事というのは南関そうめんの定義みたいなものだと考えてるんですよ。

延ばしたそうめんは端をカットしていく

師富/うちでは2種類の商品を作ってます。

1つ目は今日作っている「曲げそうめん」です。延ばした麺を切らずに曲げて束ねた商品で、お相撲さんの髷(まげ)みたいでしょ。長いので食べる時は紐を解いて、半分に折って茹でるんですよ。

師富/そしてもう1つが、うちの屋号にもなっている「雪の糸」ですね。

限界まで細く延ばしたそうめんで、その中でも規格に合う細さの麺だけを一つ一つ人の手で選りすぐった最高級品です。曲げそうめんに比べてもまだ細い作りで、淡雪のような繊細な口当たりが絶品ですよ。

師富/南関そうめんは全てが手仕事です。

手間暇がかかりますし、一日に少量しか作れません。実際、今日作っているそうめんも来年夏の出荷分ですしね。

師富/だけど、弾けるようなコシ歯ざわりといった南関そうめんならではの良さは手仕事じゃないと出せません。手仕事にはじまり、手仕事に終わる。それが、南関そうめんの伝統なんですよ。

先代と過ごした2年の日々

-もともと、この製麺所を継ごうと思ってたんですか

師富/はい、思ってました。

この製麺所は僕が小さい頃の遊び場だったんです。先代で祖母の井形 朝香はいつもここで南関そうめんを作っていました。僕は大のおばあちゃん子だったので、暇さえあれば出入りして遊んでましたね。

成人して熊本市内で就職しましたけど、いつか継ぎたいと思ってて、30歳の時に先代に弟子入りすることを決心したんです。

先代の賞状

師富/そこから先代にそうめん作りを教えてもらう日々が始まりました。おばあちゃんとしては優しい祖母も、師匠としては厳しかったですね。始めて半年間は、一度もそうめんに触らせてもらえませんでしたから。

そうめん作りは見て、感じて、盗むんです。

そうめんに触れるまでは、ただただ先代を見て配合の分量をノートに取り続けてました。そして1年後、やっと材料に触れるようになっても、ノートを片手に必死に先代の動きを観察してましたよ。

師富/南関そうめん作りで難しいのは手延べだと思われがちですけど、実は一番難しいのは生地です。

小麦粉と塩水を合わせて生地を作るときに、水分が少ないと麺が切れますし、逆に多いとコシが生まれません。しかも、その日の温度や湿度によっても配合のバランスが変わるので、ここは感覚の世界なんですよ。

その感覚を養うために、先代に見守られながら生地を作り続けた時間が、間違いなく職人としての自分を作りあげてくれました。

師富/そんな祖母も一昨年他界しました。仕事場では厳しい師匠でしたけど、普段は本当に陽気で僕の大好きなおばあちゃんでした。

その姿を見れないのは少し寂しくもありますけど、僕には祖母が遺してくれたそうめん作りがあります。これからも先代に見られても恥ずかしくないような、良いそうめんを作っていくつもりです。

伝統を継ぐ思いと全てへの感謝

-南関そうめんが抱える課題について教えていただけますか

師富/ずばり、後継者不足です。最盛期は南関町に50軒近くあった製麺所も今では10軒あまりになってます。

最近では後継者不足を解消するために地域おこし協力隊の募集も始めました。これは求人目的というよりも、いくつか製麺所を経験してもらって職人を生みだすのが狙いです。

師富/南関そうめんは手仕事で、職人ひとりで少量しか作ることが出来ません。だから産業自体を盛り上げていこうと思ったら、一人でも多くの職人が必要なんですよ。

そのために、今回のnoteも含めてメディアの取材にも積極的に露出するようにしています。本当は日々の注文に応えるだけでも必死ですけど、少しでもアピールしていかなければその魅力は知ってもらえないですから。

-師富さんは、なぜそこまで頑張れるんですか

師富/あえて言うなら「感謝」でしょうか。

日々そうめんを作っていると、地域の温かな繋がりや先代たちが積み重ねたきたもの、そして応援してくれる方々の存在を強く感じるんです。

そのすべての人たちが南関そうめんを次の世代につなごうと思ったからこそ、今の自分たちがそうめんを作れているんですよ。

師富/うちだけ儲かっても意味ないんです。

一人でも多くの人に南関そうめんの魅力が伝わって、文化の輪が大きくなっていく。これが目指したい世界です。

伝統は次の世代につながっていくことが一番大事だと思ってますから。

-師富さん、ありがとうございました!

師富/食べていただいたら南関そうめんの魅力がわかっていただけると思うので、ぜひいちど食べてみてください!

というわけで、食べてみた

「美味しいものはすべて食べる」が、白岳しろnoteのスタイル。さっそくいただいたそうめんを茹でていきます!

まずは、曲げそうめんからいきましょう!

結われたそうめんは真ん中が留めてあるので、まずはこの紙を外します。

そして、両端を握り力を入れて…

折るべし!!!

そうめんが折れたドキドキも束の間に、沸騰したお湯の中へ

曲げそうめんはゆで時間1分!めっちゃ短い

ピピピピピピピピ!

え、もう1分

すかさずザルにとって…

冷水で締めてあげれば


曲げそうめんの完成!

次は最高級の「雪の糸」を茹でていきます!

「雪の糸」とはよくいったもんですよ…

見てください!このきめ細やかで美しい白糸たちの饗宴を…

ちなみに雪の糸のゆで時間は30~45秒

いざ、GO TO 鍋!!!

さっきの曲げそうめんも細かったけど…

雪の糸は一本一本の目視が難しいほど細い

そして45秒なんてあっという間。入れて程なくザルにとって

余熱が通らないうちに素早く、水で締めます

というわけで、2種類とも完成!

この2つを盛り付けてみたのがコチラ!!!

え、めっちゃ綺麗じゃない!?

南関そうめんに合わせるお酒はもちろん白岳しろのロック。淡い味わいと合わせるときはロックがオススメです!

まずは曲げそうめんから食べてみます。

え、なにこれ…

ズルい!

普通、細いと食感は物足りないのに、コシがめちゃくちゃ強くてブチブチと音がする!

つまり…

うまぁぁぁぁい!!!!

すかさずしろロックで流し込む

ふぅぅぅぅぅぅぅぅうー!!

うまい。これはうまいぜ。

そうめんのしっかりとしたコシを優しくしろロックが包む相性抜群の組み合わせ

そしてついに最高級「雪の糸」を実食

こ、これは…。

私が知ってるそうめんじゃない!

口に入れた瞬間に溶けるような口触りと噛んだ時に跳ね返してくるようなコシ。これは矛盾を乗り越えた楽園のそうめんですわ!

ああ、やめられないし、とまんないよ。

ここで、しろロックアゲイン!

…………!

もう言葉は要らんです。

淡雪のような雪の糸をしろが幸福と共にに流し込んでくれました。熊本を誇る「しろ」たちが手を取り合ってダンスした瞬間です。

この後も獣のように食べ飲み続け…

完食!

本当に美味しいそうめんの概念を超えたそうめんでございました。雪の糸素麺  猿渡製麺所さん、ありがとうございました!※店舗では取扱数自体は少ないものの、ご家庭用など小売しているとのことでした

これからもnoteでは美味しい食材と巡り合うために旅ーしていく予定です!もし「白岳しろに合うこんな美味しいものがあるよ」という情報があればお寄せくださいね。

それでは、みなさまも美味しい一日を!

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