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ずっと苦手で、悔しくて、あきらめていたことがある。 先生の声だけが響く教室で、こっそり隣の子と話したかった。 「昨日のテレビ見た?」 「見た見た。宿題できなかったけど、これでいいのだー」 「俺もなのだー」 そんなばかばかしい内緒話がしたかった。 背伸びしたレストランで、女性に恋をささやきたかった。 「前から言おうと思ってたんだけど」 「なあに?」 「君の笑い声……好きなんだ」 そんな青い春をささやきたかった。 静まり返ったオフィスで、席