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全国から年間4万人が訪れる人吉のみそ・しょうゆ蔵「釜田醸造所」。積み重ねた歴史が水害で流れた時、再び芽生えた“本物”への覚悟とは

約3万人ー

この数字は当社が本社を構える熊本県人吉市の人口ですが、こんな九州の小都市にありながら最盛期には年間4万人もの来場者が訪れていた驚くべき観光蔵があります。

釜田醸造所「みそ・しょうゆ蔵」

清流・球磨川の水にこだわり、大豆と小麦、塩だけを熟成させて造る「自家製天然もろみ」を人吉で唯一採用する釜田醸造所。

創業から100年近い歴史を有し、マルカマ醤油さがら生みそといったブランドで長きに渡ってお客様の舌を唸らせてきました。

そして、観光蔵がこれほど人気となった秘密はその臨場感にあります。

まるでうなぎの寝床のような100mにも及ぶ通路に連なる製造現場で、職人たちが醤油や味噌を仕込む様子はまさに圧巻の一言。

その仕事ぶりを間近で体感できるコースは一種の劇場型コンテンツとして、人吉観光の中でも絶大な人気を誇ってきたのです。

しかし、そんな釜田醸造所は令和2年7月豪雨で商品や設備が流され、被災後は営業停止を余儀なくされました。

製品在庫から自慢の天然もろみまで蔵の全てを流した被害は甚大で、一時は廃業まで視野に入れたといいます。

現在、こうした歴史ある蔵の再生と新しい価値づくりに会社全体で取り組んでいるのが3代目の釜田 顕(かまた あきら)さんです。

観光蔵の隆盛、豪雨災害のダメージ、そして新型コロナウイルスによる観光客の激減。

目まぐるしい変化の中でも、釜田社長が前を向き続ける理由は一体どこにあるのか。今回はその思いに光を当てながら、老舗の矜持に迫っていきます。

蔵めぐりが広げるつながり

--さっそく、味噌と醤油の香りが漂ってきました!

釜田/ここが、当社製品の生まれる場所ですからね。

うちの蔵めぐりのこだわりは、職人たちが働く様子を見ながら味噌や醤油が出来る工程を楽しめることなんです。仕込みから掃除まで、日々どんな想いで商品を造っているのか直に感じてもらいたいんですよ。

釜田/そして見学後は人吉茶を飲みながら味噌漬や佃煮を食べていただいて、蔵の雰囲気から商品の味まで丸ごと体験してもらうようにしています。

釜田/見て楽んで、歩いて感じて、舌で味わう。

自分の五感をフルに使うからこそ、ストーリーを感じていただけると思うんです。その場でしか生まれないライブ感にはやっぱり人の気持ちを震わす魔法のような力があるんですよね。

釜田/こうした蔵見学をもう30年以上地道に続けて、今では全国各地5万人以上の会員様とつながることが出来ました。

うちの商品は一部の小売店様にも卸していますが、実はこの蔵での直売やオンラインショップでの販売がメインなんです。

ご来場いただいたお客様に誠心誠意を尽くして、忘れられない体験と共に私たちのファンになっていただく。見学はもちろん、その後の関係性を丁寧に紡いでいくことを僕たちは大切にしています。

釜田/一度の蔵めぐりから10年来のお付き合いが続くことも珍しくありませんし、「釜田さんのお醤油や味噌じゃないと」と言っていただけるお客様に支えられてきました。

そういう意味でこの蔵は全国のお客様からのお声を受信して、私たちの思いを発信する文字通りのアンテナショップなんですよ。

この蔵めぐりを起点に関係性を深められるのが当社の強みでもあるので、今後も心の通ったやりとりを続けていきたいです。

調和の世界と“本物”へのこだわり

--どうして家業を継ごうと思ったんですか?

釜田/東京の大学を卒業して大手小売チェーンに就職したんですけど、当時は本当に仕事出来なくてね(笑)。若いながらに「これは実家で働くしかない」と思い立って、26歳の時に人吉に帰ってきたんです。

配達係からのスタートで、自分の出来ることに必死に食らいつく毎日でした。そうする内に少しずつ仕事にも慣れてきて、次第に県外への営業各地の物産展まで色々な所に顔を出すようになりましたね。

当時社長だった父は、寡黙な研究者肌。一方僕は話好きなタイプだったので、外回りの仕事が合ってたんでしょう。あと性格が真逆ということもあって、家業にありがちな親子喧嘩もほとんどした記憶がありません。

釜田/その後、高速道路の延伸と共にみそ・しょうゆ蔵にもどんどん観光客が増えて僕が34歳のタイミングで正式に会社を継ぎました。

味噌や醤油ってそのまま食べるわけではないので、味だけでなく食材との調和やその時代の生活様式に合わせたマーケティングが特に重要なんですよ。

僕はよく「うちはモノマネ会社だ」なんて表現するんですけど、他社商品の良いところは積極的に取り入れながら、そこに独自のアイデアや工夫を重ねてお客様のニーズに沿った商品開発をしてきました。。

釜田/ただ、そんな変化の中にあっても絶対に変えなかったのが、創業以来受け継いできた造りへのこだわりだったんです。

球磨川の水と最高の原料で造る自家製の天然もろみを採用しているのは人吉球磨ではうちだけなんですよ。手間暇がかかっても“本物”の味を追求することが、代々続いてきた釜田醸造所の伝統なんです。

商品の質には一切妥協をしないので、価格も決して安くはありません。でも、お客様には美味しいものを適正価格で届けて、その味で納得いただきたいと思ってます。

釜田/最近は新型コロナの影響も少なくなってきたので、催事への出店や外部の販売会にも積極的に参加するようにしています。

蔵めぐりもそうですけど、価値を伝えようと思ったらやっぱり基本はお客様との対話が大事になってくるんですよね。

目の前で良さを伝えて、心の底から感動していただく。こんな関わり方を貫いてきたので、これからもお客様と真剣に向き合っていきますよ。

豪雨災害で遺ったもの

--令和2年7月豪雨では、商品も設備も蔵ごと流されたと伺いました

釜田/あの日1.5m以上の濁流が蔵に押し寄せて、気づいた時には商品も製造設備も水に浸かりきってました。

うちの代名詞でもある天然もろみのタンクが駄目になったのを見たときは、あまりの絶望に廃業まで考えました。辛かったですね。

釜田/それでも、従業員たちが一生懸命復興に取り組んでくれたことやボランティアの皆さんから温かい励ましの言葉をいただく中で、僕自身も少しずつ前を向き始めました。

長年この蔵を支えてくれた従業員やその家族を守りたかったし、球磨川の恵みと生きてきた醸造所として球磨川を理由に造りを諦めたく無かったんです。この時に必ず蔵を再生すると腹を括りましたね。

釜田/そして水害から2ヶ月後の2020年9月、建物修繕や設備・原材料の購入を目的としたクラウドファンディングを開始しました。

釜田/絶対に復興するという決意を込めて、返礼品には“復興しょうゆ”を設定しました。水害で傷ついた蔵に残っていた酵母を選別して造る「奇跡のもろみ」を使って、水害後に初めて仕込む醤油です。

2年以上お待ちいただきましたが、ようやく今年復興しょうゆの仕込みが始まりました。

あの惨状からここまで漕ぎ着けられたのは、ひとえに皆様のご支援あってのこと。感謝以外の言葉はありませんので、いま自分たちに造れる最高のしょうゆでその御恩を返していきたいと思っています。

釜田/豪雨災害を振り返ると、改めて二つのことに気づかされました。

一つ目は、うちの蔵がいかに多くの人に愛されてきたかということです。

お客様、ボランティアの方々、寄付をいただいた皆様、そして蔵で働く従業員たち。みんなが「この蔵にあり続けて欲しい」というメッセージを発信してくれたからこそ今日もこうして存続できているんですよね。

釜田/そしてもう一つは、“本物”にこだわり続ける意味です。

被災前は少し時代に合わなかったり不採算な商品があったとしても「まあ、いいか」と流していた部分もありました。でも、今回の水害が商品ラインナップや採算を改めて見直す契機になったんです。

釜田/昔から“本物”を追い求めている自負はありました。

しかし、水害の際にあれだけの期待をいただいていることを知り、これまで以上にお客様と向き合って本気でその想いに応える覚悟が固まったんです。

流されたものもありましたが、本当に届けたい本物への構えを思い出せたことはあの水害の真ん中にいた意味なのかもしれませんね。

--今回はありがとうございました!

釜田/はい、ありがとうございました。

うちの商品は醤油や味噌だけでなく、そのまま食べられる加工食品もたくさん揃っているのでぜひ一度食べてみてください。

というわけで、食べてみた

美味しいものは全て食べるのが白岳しろnote。さっそく釜田醸造所の逸品たちを実食していきます。

今回のラインナップは…

左/卵かけご飯と相性バツグン!「うまかしょうゆ」

中央/釜田醸造所人気NO.1「山の幸海の幸(木くらげとわかめの佃煮)」

右/生みそ使った本格派 FDみそ汁「豚汁」

こんな釜田醸造所の人気商品と白岳しろで準備した、特製プレートがこちら!

まずは、熱いお湯を注ぐだけで簡単にフリーズドライの豚汁が完成!

次は絶品TKG(卵かけご飯)を準備。

まずはアツアツご飯に新鮮な卵をダイブさせ、上から絶品ダシが決め手の「うまかしょうゆ」をかけていきます。

しっかりとかき混ぜた後に追加でうまかしょうゆを倍率ドン!

さらに倍!

それでは満を持して…

いただきまーす!!!

卵かけご飯…うっま!!ウマー!!

なにこれ!?今まで食べてたTKGの概念サラッと壊していくじゃないすか。卵のコクの後に、しょうゆの出汁のいい香りが鼻を抜けていくこの爽快感…

そしてこのTKGに釜田醸造所人気NO.1の山の幸海の幸を落としての味変がすごく良い。

コク✕コクの饗宴…。

しょうゆってこんなに優しい味でしたっけ?そして、口の中の生卵の面影をすかさず豚汁で流していきます!

ああ…いい…。

この味噌のやさしい風味は格別…。思わず実家の食卓が脳内をかすめていきました。

最後はお酒とも相性がいい山の幸海の幸を白岳しろロックと合わせてフィニッシュ…。これは永遠に食べ続けられるやつでした。

ということで、釜田醸造所の美味しい恵みを堪能いたしました。オンラインショップでご注文いただけますが、是非一度蔵めぐりにもお越しください!

そこでは100年近くの歴史の重みと職人たちの熱き魂で、きっとみなさまを温かくお出迎えしてくれますよ。

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